【米G1・BCクラシック】高木登師 ウシュバテソーロと挑む米最高峰レース!再び世界を驚かす
再び世界を驚かせろ。ダート競馬の本場米国が誇る最高峰G1「第40回ブリーダーズCクラシック」(日本時間5日、サンタアニタパーク)にウシュバテソーロ(牡6)が出走する。日本馬で初めてダート施行のドバイワールドCを制した名馬の素顔、世界挑戦の裏側について管理する高木登師に聞いた。同レースは31日に出走馬と枠順が確定。13頭立ての8番ゲートに決まった。
――ドバイワールドC直後は凱旋門賞挑戦の話もあった。BCクラシック出走に至った経緯は?
「ウシュバテソーロは暑さに弱くて叩き良化型。凱旋門賞の日程を考えると、どうしても夏に始動しなければならなかった。オーナーサイドと相談してダートの最高峰のレースに向かおう、と」
――ドバイでは最後方から大捲り。
「道中は画面に映っていなかったからビビりましたよ(笑い)。普通の馬だとあれだけ前が離れるとレースをやめてしまうけど、ウシュバの偉いところはハミを取って上がっていける。歯を食いしばって最後まで頑張れるのは過去に管理したG1馬との共通点。大したものです」
――ゴール前は興奮。
「感情を出すタイプの人間ではないので。現地のカメラに撮られているから喜ばなきゃ…みたいな(笑い)。表彰式で君が代が流れた時は感動しました」
――5歳4月にダートに転向して1年たたずに世界一に輝く異色の経歴。
「パワー型で以前からダート適性は感じていましたが、芝でも結果が出ていたのであのタイミングに。転向初戦が後方から凄い競馬でしたが、当時はまさかここまで来るとは思わなかったですよ」
――昨秋のブラジルCから6連勝中。どのあたりで手応えを感じたか?
「(2連勝目の)カノープスSで完全にマークされた厳しい競馬を勝ち切ってくれた時に、これは凄い馬だなと思いました。実はブラジルCも、3連勝目の東京大賞典もレース前は補欠(除外対象)で出られない可能性が高かった。運も味方してくれました」
――父オルフェーヴルは凱旋門賞2着2回。ステイゴールド系の海外適性が改めて注目されている。
「ドバイでは到着した初日こそ少し気が入ってしまいましたけど、その後は平常心でした。レースぶりを見ても、ステイゴールドの血の闘争心のおかげもあるのかもしれません」
――ご自身の海外競馬への思いは?
「英国やアイルランドに研修へ行き、いつかチャンスがあれば…と憧れはありました。米国競馬はやはりテンから速い印象。そこを考えてドバイを経験させたところもあるし、砂質もドバイと似ていると聞いています」
――ウシュバは独特なキャラクターも人気で、パドックで首をだらんと下げる姿は「出社前の自分みたい」、「やる気がないチョコボ」などとSNSで若者にも話題。
「あれ、実は違うんですよ(笑い)。あのパドックはカーッと気が入って手が出せない状態。何とかうまく抜きながら、なだめながら歩かせているんです。やっている側からしたらギリギリですよ」
――のんびり屋に見えて、普段から気難しい面があるのか?
「昔に比べれば雲泥の差はありますが、我が強い馬です。2歳の頃はコントロールが利かなくて、新馬戦では調教再審査になりました。レース前にたてがみを編んでいたら、レースだと分かったのかプツンとスイッチが入って手がつけられなくなったことも。普段の馬房でもカイバを食べている時に手でも出そうものなら、かみつかれて持っていかれますよ」
――最後に、レーティング首位で迎える大一番へ意気込みを。
「6歳になって体がモリッと良くなって、精神的にも成長し、完成の域に来たのかなと思っています。調整もここまでは順調に来ました。ブリーダーズCを勝ったことがある騎手(川田)が乗ってくれるのも心強い限りです。あくまで挑戦者ですし、あとは平常心で無事にスタートを切ってくれれば」
◇高木 登(たかぎ・のぼる)1965年(昭40)5月25日生まれ、神奈川県出身の58歳。88年に競馬学校厩務員課程を修了し、同年9月に美浦トレセン入り。5厩舎で経験を積み、06年に調教師免許を取得した。翌07年3月に開業。14年毎日杯(マイネルフロスト)でJRA重賞初制覇。同年、スプリンターズS(スノードラゴン)でJRA・G1初制覇。主な管理馬はサウンドトゥルー(16年チャンピオンズC)、ニシノデイジー(22年中山大障害)。弟子の菅原明は関東リーディング3位で、19年に新人騎手育成賞も獲得している。JRA通算4594戦356勝。
《海外レースに強い血脈》国内産の国内調教馬として初めて海外G1を制したステイゴールドの子孫は海を越えて活躍が目立つ。直子ナカヤマフェスタ(10年)、オルフェーヴル(12、13年)が凱旋門賞2着。先日の凱旋門賞では孫世代のドリームジャーニー産駒スルーセブンシーズが4着と健闘した。ウシュバテソーロと同じオルフェーヴル産駒マルシュロレーヌが一昨年のBCディスタフで日本調教馬初の海外ダートG1優勝を成し遂げている。
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