高知所属・宮川実 「世界1位になってきます」 今週札幌でWASJ 井上オークスさんがエール

[ 2023年8月22日 05:30 ]

WASJに初出場する宮川実
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 今週は札幌で国際騎手招待「2023ワールドオールスタージョッキーズ」(WASJ)が開催される。海外から6人、国内から8人の計14騎手が、土日4競走の着順によるポイントで覇を競う。地方代表として初出場を果たしたのが高知競馬所属の宮川実(41)。落馬事故で左目の視力を失いながら、不屈の闘志で騎手に復帰し地方通算2000勝を達成した名手。大舞台に挑む隻眼(せきがん)のいごっそう(土佐弁で信念を貫く気骨者)に、親交のある競馬ライター・井上オークスさんがエールを送る。

 高知競馬には、ダービーの1着賞金が27万円だった時代がある。なのに高知のホースマンは、めちゃめちゃ競馬を楽しんでいた。会う人、会う人に魅力を感じ、何度も足を運んだ。しかし馬券の売り上げはどん底で、廃止寸前の崖っ縁。一縷(いちる)の望みと諦めが入り交じって、私は勝手にナーバスになっていた。そんな中で行われた、09年3月の黒船賞。地元高知のフサイチバルドルが、宮川実騎手を背に3着をもぎ取った。9番人気の大激走。泥だらけで帰って来た宮川騎手の笑顔を見た瞬間、涙がドバッと噴き出した。27歳のホープが、大きな希望を感じさせてくれた。

 それから1カ月半後、宮川騎手はレース中の落馬事故で、左目の視力を失った。誰もが「もう騎手を続けられないだろう」と思っていた。

 ところが宮川騎手は諦めなかった。視界の変化に戸惑いながら、恐怖心と闘いながら、13カ月後に復帰を果たした。レース後、「思ったより周りが見えました」と言った宮川騎手の明るい表情と、復帰を喜ぶ高知ジョッキーズの笑顔と泣き顔が忘れられない。こんなにうれしいことがあろうか…と思った。

 皆の頑張りが報われて、高知競馬の経営状況は劇的に回復。ダービーの1着賞金は1600万円になった。ケガをする前の宮川騎手は馬をねじ伏せるような乗り方をしていたが、馬の気持ちに寄りそう騎乗に変化した。昨年は通算2000勝に到達し、初めて高知のリーディングジョッキーとなった。勝率は2年連続で全国1位に輝いた。

 快進撃は止まらない。今年1月には中央、地方のリーディング騎手が腕を競う佐々木竹見カップ(川崎)を優勝。さらにWASJの出場権を懸けた地方競馬ジョッキーズチャンピオンシップも優勝。地方競馬代表として、初めて北の大地のひのき舞台に立つ権利をつかんだ。宮川騎手がJRAの競馬場で世界の名手と騎乗するなんて夢みたい。もう、どれだけうれしがらせてくれるんだー!20日に高知で行われた壮行式で、41歳になった宮川騎手は言った。

 「初めてのことが多いのでドキドキしているんですけど、ワクワクのほうが勝っています。高知競馬場でこれまで学んできたことを精いっぱい出し切って、世界1位になってくるので、応援よろしくお願いします!」

 ◇宮川 実(みやがわ・みのる)1982年(昭57)2月10日生まれ、高知県出身の41歳。打越勇児厩舎所属。99年に高知で騎手デビュー。同10月2日の高知3Rカタマルヒーローで初騎乗初勝利。09年5月2日、高知1Rの落馬事故で左目を失明。約1年の療養を経て、10年5月29日の高知4Rで復帰(7着)。22年1月9日の高知8Rで地方通算2000勝を達成。21、22年NARグランプリ最優秀勝率騎手賞を受賞。地方通算2215勝(21日現在)。妻は元騎手、高知の宮川真衣調教師。

 ◇井上オークス 1977年(昭52)11月11日生まれ、佐賀県出身の45歳。ほぼ住所不定の旅打ち競馬ライター。2冊目のエッセー集「馬酔い放浪記」で岩手競馬の馬事文化賞を受賞。

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