【天皇賞・秋】1番人気イクイノックス 鬼脚V!絶望的15馬身差、最後の最後に届いた

[ 2022年10月31日 05:30 ]

<天皇賞・秋>1着でゴールするイクイノックス(撮影・西海健太郎)
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 ハラハラドキドキの一戦を制したのは3歳馬!!伝統のG1「第166回天皇賞・秋」が30日、東京競馬場で行われ、1番人気イクイノックスがパンサラッサの大逃げを捉えてG1初制覇。昨年のエフフォーリアに続く3歳馬Vで、21年ホープフルSから続いた1番人気馬の平地G1連敗を16で止めた。デビュー5戦目での古馬G1制覇はグレード制を導入した84年以降で最少キャリア。父キタサンブラックとの父子制覇も決め、父を所有した北島三郎オーナーから本紙に喜びのメッセージが届いた。

 視界が開けた直線525・9メートルの入り口。イクイノックスの馬上でルメールは絶望した。「“えっ…”ってなった。正直、間に合わないと思った」。馬群の中では確認できなかった逃げ馬パンサラッサの姿ははるか15馬身先。「パンサラッサは強い。これは届かない」。天皇賞・秋3勝の名手の頭によぎった敗戦の2文字。だがイクイノックスは諦めず、ギアをトップに入れた。

 9番手から外に出す。長い手脚が軽やかに、力強く躍動し始めた。1完歩ずつ大きくなるパンサラッサの背中。大きくなる歓声。繰り出した上がり3Fはメンバー最速の32秒7。近づく。並んだ。かわした。あまりに遠かった目標はゴールの瞬間、1馬身後方にあった。ルメールが右手を振り上げる。「坂を上ってからの脚は本当に凄かった。ダービーの時はラスト100メートルで疲れていたけど、今日はゴールまで加速し続けていた」

 体質に弱さを抱え、それは今も変わらない。慎重な調整、細心のレース選択の末、春は皐月賞、ダービー2着。あと一歩。何が足りなかったのか。悔しさを胸に夏を過ごした。時間が解決した。秋を迎え、たくましくなった相棒にルメールは目を細めた。「馬は強くなった。背が大きくなって成長した」。名手は5年前、同じ7番枠から盾を制した父の急激な成長曲線を思い出した。「キタサンブラックの子だから、この秋から来年にかけてさらに強くなる。これが最初のG1だけど最後のG1ではないよ」と笑顔で言い切った。

 木村師にとって忘れられない言葉があった。菊花賞前。ダービー3着馬アスクビクターモアで菊に挑む田村師が「ダービー組の格を落とす訳にはいかないから何が何でも勝つ」と話した。美浦に凱旋した後、田村厩舎のスタッフは木村師をこんな言葉で激励した。「天皇賞は何とかしてください」。木村師の心に熱いものが宿った。真夏日に行われた“しゃく熱ダービー”。サバイバルをくぐり抜けた上位馬はそれぞれプライドを胸に抱いていた。

 次戦はジャパンC(11月27日、東京)か有馬記念(12月25日、中山)が選択肢となる。木村師は「まずは状態をしっかり見極めてからになるが、年内でもう一戦走れるよう調整していくつもりです」。ルメールは「スタミナもパワーもあるし、2500メートルまでは大丈夫。大きなチャンスがある」と自信をのぞかせる。豪華メンバーが集った大一番で1番人気の連敗を止めたのは春無冠の3歳馬。キタサンブラック級の進撃がいよいよ始まった。

 ▼北島三郎 イクイノックス優勝おめでとうございます。G1でも天皇賞は特別な重みがあるレース。まだ3歳なのに、とても強い勝ち方で感動しました。同じ天皇賞で同じゼッケンでの父子制覇というのもうれしかったなあ。キタサンブラックが走っていた時を思い出して興奮しました。これからもケガをしないで勝ち続けてほしいと願っています。

 イクイノックス 父キタサンブラック 母シャトーブランシュ(母の父キングヘイロー)19年3月23日生まれ 美浦・木村厩舎所属 馬主・シルクレーシング 生産者・北海道安平町のノーザンファーム 戦績5戦3勝(重賞2勝目) 総獲得賞金4億324万2000円 馬名の由来は昼と夜の長さがほぼ等しくなる時。

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2022年10月31日のニュース