【大阪杯】ジャックドール100点 抜きんでた実力と美しい容姿

[ 2022年3月29日 05:30 ]

鈴木康弘「達眼」馬体診断

ジャックドール
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 仁川の中距離決戦は2強の一騎打ちだ。鈴木康弘元調教師(77)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第66回大阪杯(4月3日、阪神)では昨年の年度代表馬エフフォーリアと共に5連勝中のジャックドールを満点採点した。達眼が捉えたのは2つの長所を兼備した2強ボディーだ。

 抜きんでた実力と美しい容姿を兼備した男性を「風流才子」といいます。その代表格は源氏物語の主人公、光源氏。現代の風流才子を挙げれば羽生結弦でしょう。「宝石玉の面立ち、松の伸びやかな立ち姿、オオハクチョウの優雅な飛躍、竜の流麗な舞」。中国国営放送の解説者はこんな意味の漢詩を披露したそうです。海外の風流才子なら金髪のロン毛をヘアバンドで留めたビヨン・ボルグ。テニスコートにトップスピン旋風を起こし、ウィンブルドン5連覇(76~80年)を達成した時、世界中の女性の目がハートになりました。

 風流才子の馬といえば、尾花栗毛と呼ぶ派手な金色のタテガミをなびかせたトウショウファルコ(中山金杯、AJC杯優勝)、サッカーボーイ(マイルCSなど)、ゴールドシチー(阪神3歳Sなど)…。パドックに美しい容姿を見せたトウショウファルコには女性ファンの黄色い歓声が上がりました。私のようなシルバー世代の競馬ファンなら栗毛のメイズイ(63年ダービー馬)を挙げるかもしれません。「史上もっとも美しい馬であった」と寺山修司は自著に記しています。

 5連勝中のジャックドールも風流才子列伝に名を連ねる競走馬です。破竹の勢いでG1に初挑戦するこの4歳牡馬の体の特徴を列挙すると…。栗毛、大流星、鼻梁(りょう)鼻大白、下唇白、四長白(幅広の白班が鼻筋から鼻まで長く伸び、下唇にも白斑、四肢には長い白班)。タテガミや前髪はドール(フランス語で黄金)の馬名通り、黄金色に輝く尾花栗毛に見えます。遠目にもまぶしく映る栗毛と白班の美しいコントラスト。派手な被毛に包まれているのはひと目で非凡さが分かる筋骨です。

 父モーリス譲りのボリューム感あふれる首、胸前、肩の筋肉。たくましく張り出したヒ腹。トモはもっと分厚い。絶妙な角度で連結した飛節が、みなぎるトモのパワーを逃さず推進力に換えています。500キロ超の大型馬でもつくりに無駄がない。各部位が機能的につながっています。

 「ムチも使わずに疾走する馬のような…」。羽生結弦の姿に中国国営放送の解説者はこんな意味の漢詩もしたためたそうです。想起するのはムチをほとんど使わないまま連勝街道を疾走するジャックドール。黄金色に光り輝くターフの風流才子です。(NHK解説者)

 ◇鈴木 康弘(すずき・やすひろ)1944年(昭19)4月19日生まれ、東京都出身の77歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許取得、東京競馬場で開業。94~04年に日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなど27勝。19年春、厩舎関係者5人目となる旭日章を受章。

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