【マイルCS】イスラボニータ100点 巨匠ドガ想起させる造形美

[ 2015年11月18日 05:30 ]

馬体の部位全てがバランス良く調和しているイスラボニータ

 マイルに輝く名馬が油彩画の中から飛び出してきた。鈴木康弘元調教師(71)がG1有力候補の馬体を診断する「達眼」。第32回マイルCS(22日、京都)ではイスラボニータをモーリスと共に満点採点した。鋼のように強堅なモーリスとは対照的な流麗な馬体とは…。

【マイルCS】

 イスラボニータの凜(りん)とした立ち姿を見ていると、馬体診断から離れて、馬の名画を鑑賞しているような錯覚に陥ります。例えば、印象派の巨匠エドガー・ドガの鋭い線描と鮮やかな色彩にあふれた作品に触れたような…。サラブレッドらしい流れるような馬体のライン。トモ(後肢)と肩がバランス良く調和し、過不足ない骨量を飛節、球節が絶妙な角度で支えています。抜けるような首差し、しっかり寝たつなぎ。全ての部位が完璧な形で整っている。黒鹿毛は漆黒の光沢を放ち、額から鼻先へ伸びる大流星の白色と鮮やかなコントラストを描いています。どこまでも美しい。

 天皇賞・秋の馬体診断ではその美し過ぎる肢体ゆえに辛口採点(80点)しました。タフな東京2000メートルの激闘をしのぎ切るたくましさ、馬体から浮かび上がる鋼のようなパワーを求めていたからです。それでも、レースでは小差の3着。不利な外枠を引いたため、いつもより後ろに控える形を取りながら差を詰めてきました。名画のシルエットを思わせる姿は観賞するための造形美ではなく、馬体の部位全てがバランス良く調和した走るための機能美だったのです。

 今回の立ち姿には、さらに加点したい。毎日王冠、天皇賞と秋2戦を消化しても、使い減りした痕跡がどこにもないのです。ふっくらとした腹回り、穏やかな顔つき。心身共に、万全の状態で京都へ向かえるでしょう。 (NHK解説者)

 ◆鈴木 康弘 1944年(昭19)4月19日、東京生まれの71歳。早大卒。69年、父・鈴木勝太郎厩舎で調教助手。70~72年、英国に厩舎留学。76年に調教師免許を取得し、東京競馬場で開業。78年の開場とともに美浦へ。93~03年には日本調教師会会長を務めた。JRA通算795勝、重賞はダイナフェアリー、ユキノサンライズ、ペインテドブラックなどで27勝。

続きを表示

2015年11月18日のニュース