【マイルCS】1着エーシンフォワード

[ 2010年11月22日 06:00 ]

直線内から伸びたエーシンフォワード(手前)が快勝

 秋の最強マイラーを決める「第27回マイルCS」が21日、京都競馬場で行われた。13番人気のエーシンフォワード(牡5=西園)が内を突いて抜け出し、レコードタイムで見事初G1制覇を成し遂げた。勝利に導いた鞍上の岩田は、落馬負傷から13日に戦列復帰したばかりで、2勝目がこの大きな白星。人馬ともに待望の美酒となった。

 13番人気の伏兵エーシンフォワードを駆って、騎乗復帰2週目の岩田が大仕事をやってのけた。「よっしゃー!」。検量室前に雄叫びが響く。「落馬から復帰して乗れるようになったばかり。こんなに早くG1を勝たせてもらえるとは思わなかった」。ほおを紅潮させながら、素直な喜びを口にした。
 卓越した手綱さばきが光った。13番枠から好スタートを決めると「内のスペースが空いてくれたから」とすぐさま内ラチ沿いの絶好ポジションに導く。レース前に陣営は外枠を嘆いていたがこれで不安は解消。前半3F33秒7のハイペースで折り合いもぴったり。ならば直線はもう迷いなしだ。「内が悪くなかった」とそのままインを通りラスト1Fで先頭。最後は脚がいっぱいになったフォワードをこん身の左ムチで励まし、先頭でゴールにねじ込んだ。勝ち時計の1分31秒8はレコードのおまけ付き。
 岩田にとっては格別の1勝だ。9月4日の札幌1Rで落馬。肩から地面に叩きつけられて左足関節外果骨折、右鎖骨骨折と診断された。「2カ月間長かったけど家族の支えがあって復帰できた。馬に乗って勝つことが薬。痛みを忘れさせてもらえる瞬間です」
 まして、とりわけ愛情を注いでいる馬。阪急杯をテン乗りで勝利に導いた後は、栗東を訪れる火曜から木曜、毎週稽古前に西園厩舎に足を運ぶほど。「素直で人なつっこくて頑張り屋さんです」。全力で走り切った愛馬を、岩田はあらためて称えた。
 西園師は興奮を隠し切れない。「天にも昇る思い」。休み明けの前走スワンSはマイナス8キロで1番人気ながら8着となり、中間は馬体回復を重視。出来も上昇させながら見事プラス10キロで出走させた。東スポ杯2歳Sのサダムパテックに続き2日連続重賞制覇。「この後、息子とハリーポッターの映画を見に行く予定だったけど、自分がハリーポッターになっちゃったよ」。陽気な指揮官が、ひときわ明るい笑顔になった。
 課題とされた距離を克服しての勝利にフォワードへの期待は膨らむばかりだ。「よく頑張ってくれたし、年内は休ませます。ローテはそれから考えます」。激戦の疲れを癒やし、来年は混迷が続く短距離路線の絶対王者を目指す。

続きを表示

2010年11月22日のニュース