鈴木 期待の星に“2代目襲名”を

[ 2009年2月18日 07:57 ]

 【走論書く論=鈴木正】先月31日の東京新馬戦、ゼンマツという馬が松山康厩舎からデビューした。中団インから直線で脚を伸ばして6着。レース経験を積んでいけば、いずれ白星の順番は回ってくるだろうと思わせる走りだった。

 ここで「ゼンマツ」という馬名に、ン!?と反応した読者は、かなりのベテラン競馬ファン。実は70年代初頭にもゼンマツという馬がおり、吉永正人騎手(故人)を背にダービー5着、アルゼンチン共和国杯の前身であるアルゼンチンジョッキークラブCを制した。所属は松山康師の父、松山吉三郎厩舎。吉永みち子さんが自著「気がつけば騎手の女房」の中で「灰色のゼンマツにほれた」と競馬にハマるきっかけとして挙げていたことでも知られる。

 現ゼンマツが美浦に入厩した直後、松山康師はこう話していた。先代ゼンマツは芦毛で根性を秘めた本当に素晴らしい馬だった。先代ゼンマツを所有した癸生川(けぶかわ)善三郎オーナーも、あの名馬の再来を期待して、とっておきの馬名を復活させたんだ。楽しみにしてくれよ、と。

 このような“馬名の復活”は最近増えている。加藤征厩舎の4歳牝馬エビスオールは、すでに2勝を挙げている素質馬。実は過去にもエビスオールがいて、71年生まれの先代は阪神4歳牝馬特別(現フィリーズレビュー)を制した。2頭は加藤友三郎オーナーの馬だが、息子の加藤征師は「期待する馬だからこそ、この馬名が付いたんだ」と解説してくれた。

 かつて使用された馬名を再度使うにはルールがある。(1)中央、地方競馬から抹消した馬名は5年間使用不可(2)中央、地方のG2、G3の勝ち馬名は抹消10年間使用不可――など。その期間が過ぎれば自由に使える。G1勝ち馬や、海外の有名馬と同じ馬名は付けられないなど細かい規定はあるが、“馬名再使用”には意外に寛容という印象だ。

 以上を踏まえ、皆さんはリバイバル馬名を、どうお感じになるだろうか。自分は大賛成。先代がどんな馬だったかを調べることで昔の競馬への興味が深まり、何よりオーナーの期待が大きいことが明らかなので、馬券を買う気にもなる。先代馬をよく知る人からは「昔のゼンマツのイメージを大事にして」という声が上がるのだろうか。歌舞伎役者や落語家の襲名と同じ感覚で、受け継がれる馬名を楽しんでもらいたいと思うのだが、どうだろう。

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2009年2月18日のニュース