佐藤琢磨「インディ500」3年ぶり2度目優勝 複数回制覇は史上20人目「幸運に恵まれた」

[ 2020年8月25日 05:30 ]

インディカー・シリーズ第7戦インディアナポリス500マイル ( 2020年8月23日    米インディアナ州インディアナポリス・モータースピードウエー )

快挙再び!インディ500で2度目の優勝を果たし、笑顔で「1番」ポーズをする佐藤琢磨(AP)
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 再び金字塔を打ち立てた!104回目を迎えた伝統のレースで、日本人最高の予選3位からスタートしたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨(43=ホンダ)が17年以来、3年ぶり2度目の優勝を果たした。世界3大レースの一つに数えられるインディ500の複数回優勝は、史上20人目の快挙。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、異例ずくめとなったレースを制し、日本にも歓喜と希望を届けた。

 異例ずくめのレースのフィニッシュもまた、異例のシーンとなった。佐藤は最後のピット作業を終えた直後の173周目、実質的なトップに。その後はシリーズ通算49勝、年間王者5度を誇るディクソンの猛追を受けたが、残り5周、同僚ピゴットが最終コーナーでクラッシュ。セーフティーカーに先導され、最高速度380キロに達する愛車には似つかわしくない、ゆっくりとしたスピードで歓喜の瞬間は訪れた。

 「2度目の優勝なんて夢にも思っていなかった。幸運に恵まれた」。8度目の挑戦だった17年に40歳で初制覇し、歴代6位の年長記録となる43歳208日で2度目の優勝。21世紀の最高齢優勝の更新は、たゆまぬ努力の証でもある。「40歳を過ぎてもレースをしているなんて夢の中で生きているみたいだ。まだ成長できている」と喜びをかみしめた。

 17年は一時は大きく順位を下げながら、残り5周で先頭に立ち逃げ切った。座右の銘「ノーアタック・ノーチャンス(攻めなければ、チャンスはない)」を体現して栄光をつかみ取った。今回は緻密な計算のもと終始先頭争いを繰り広げた。27周の佐藤をはるかに超える計111周で先頭を走ったディクソンが「彼に最後まで持つ燃料が残っていたのか」と驚くほど綱渡りのレースを完遂できたのは、攻めの走りはもちろん、円熟味を増した技術とピットワークがあったからこそ。佐藤も「燃費がきつかったけど何とか持たせた。ぎりぎりだった」と明かした。

 コロナ禍はモータースポーツ界にも大きな影を落とした。例年3月に開幕するシリーズは約3カ月遅れの6月に開幕。伝統的に5月末のメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)ウイークに開催されるインディ500も3カ月延期され、決勝日は30万の大観客をのみ込むオーバルのスタンドは静寂に包まれた。「少し寂しかったが、理解している」。偽らざる本音は、開催に尽力した関係者への感謝の気持ちでもある。

 円熟味を増すベテランは「挑戦し続ければ、チャンスをつかむことができる」と言った。スポーツ界が、社会が大きく傷ついた2020年。43歳の侍ドライバーが希望の光をもたらした。

 《ひとつぶ300メートル!》佐藤は優勝マシンの上で両手を広げて左足を上げる“グリコポーズ”で歓喜した。江崎グリコは佐藤のスポンサーで、3年前に初優勝した際には足を上げていなかったことをツイッターでファンに指摘され、「今度やってみる笑」と約束していた。

 ◆佐藤 琢磨(さとう・たくま)1977年(昭52)1月28日生まれ、東京都出身の43歳。自転車競技では高校総体で優勝し、97年に早大を中退してモータースポーツに本格転向。01年に英F3で日本人初王者となり、02年にジョーダン・ホンダでF1デビュー。BARホンダ時代の04年米国GPで日本人最高タイの3位に入った。08年を最後にF1シートを失い、10年からインディカー・シリーズに参戦。13年の第3戦ロングビーチ(米国)でシリーズ日本人初優勝、17年インディ500でアジア人初優勝。シリーズ通算6勝。1メートル64、59キロ。

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