最広!ビアンテ!

[ 2008年11月10日 06:00 ]

ビアンテ

 ダウンサイジングが“世の主流”とはいえ、やっぱり「広さ」は武器である。マツダが7月に発売した新型ミニバン「ビアンテ」はクラストップの広さとシートのスライド幅が大きいことが最大のセールスポイント。ファミリーユーザーに人気の個性派ミニバンに遅ればせながら試乗した。

 このアイディアは“アリ”だと思った。8人あるいは7人乗れる3列シートのミニバンでも実際にフル乗車なんて、大家族でもなければ滅多にないこと。これまでのミニバンは“余った空間”をカーゴスペースとして活用できることを強調してきたが、ビアンテは新しい方向性を示したと言えるだろう。

 シートのスライド幅を大きくし、サードシートにチップアップ方式を採用、さらにセカンドシートは左右にもスライドするため、多彩なシートアレンジが可能。中でもサードシートの座面をたたみ、2、3列目のシートを一番後ろまで下げる「リビングモード」は特筆もの。2列目の足元スペース長が最大で863ミリもあり、身長183センチの記者でさえ、足を思う存分伸ばすことができるのだ。

 もともと、5ナンバー枠に固執せず、3ナンバーとしたことで室内長2990ミリ、室内幅1545ミリを確保、さらに室内高も1350ミリとし、2.0~2.3Lクラスのミニバンでは最大の室内空間を持つ。それに多彩なシートアレンジが加わり、様々な場面で活躍してくれそう。例えば、山や海でのレジャーシーンなら、クルマの中での着替えだって可能。シートを移動させる操作が簡単なのも気に入った。

 唯一、不満に思ったのは2、3列目シートの座り心地が同レベルだったこと。裏を返せば「3列目もしっかり座れる」という長所でもあるのだが、個人的には、せっかく足元が広々しているのだから、シートにも差をつけて2列目はもっとゆったり、ラグジュアリーな雰囲気にだったら…と思うのはワガママだろうか?いずれにせよ室内空間の利用方法がこれまでのミニバンと違っていることが、ビアンテの魅力となっていることは間違いない。

 “走り”も個性的…というよりは“マツダ的”と呼ぶのが正しいだろう。いわゆる「ZoomZoomな走り」だ。試乗したのは上級グレードの「23S」。搭載される2.3LのDOHCエンジンはプレミアムガソリン仕様で最高出力165PSで最大トルクは21.4kg・m。圧倒的なパワーがあるわけではないが、5速ATとの組み合わせでキビキビと軽快に走る。「23S」は、パドルシフトの操作でマニュアルモードで走ることもできるが、都内の一般道と首都高の試乗では、あまり必要性を感じなかった。フル乗車する機会が少ないのであれば、レギュラーガソリン仕様の2.0Lエンジンで十分かもしれない。

 ハンドリングは低速では軽やかで、高速ではしっかり安定。外観からはスポーティーな印象を受けるが、走りと乗り心地の比重は、特に“走り寄り”ということはなく、ミニバンとしてはベストに近いバランスと言えるだろう。乗り心地は悪くない。加速時のエンジン音が多少、気になったものの、風切り音などは抑えられており、室内の静粛性も十分に合格点を超えている。

 一目で「マツダ」と分かるエクステリアデザインは、かなり個性的であるがゆえに好みが分かれそう。全体のテーマとして“流れ”が取り入れられているが、特にシャープなヘッドライトから大型三角窓に続く造形は近未来的な印象のため、見慣れるまでに時間が必要かも…。ミニバンが欲しいけど、他の人とは違ったクルマを、という人にはピッタリの1台と言えるだろう。

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2008年11月10日のニュース