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尚弥の弟・井上拓真 独占手記「ナオ、おめでとう。兄弟世界王者になるよ」

[ 2021年12月15日 05:30 ]

WBA・IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦   〇井上尚弥 8回2分34秒TKO アラン・ディパエン● ( 2021年12月14日    両国国技館 )

入場する井上尚弥(左)の後ろでチャンピオンベルトを掲げる弟の拓真(撮影・島崎 忠彦)
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 2年1カ月ぶりの国内防衛戦で勝利を飾った井上尚弥の実弟で元WBC世界バンタム級暫定王者、現WBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級王者の拓真(25=大橋)が本紙に独占手記を寄せた。モンスターと呼ばれる尚弥に最も近い場所で同じ時間を過ごし、その背中を追い続けてきた拓真は兄の活躍にも刺激を受け、再び兄弟世界王者となることを誓った。

 ナオ、2年ぶりの国内での防衛戦勝利おめでとう。試合までに「勝って当然」という声もナオの耳には当然入っていたと思う。そのような試合こその難しさは自分にも分かる。油断がないつもりでも心に隙ができたり、変に気負ってしまったりとか、気持ちのバランスをとるのが難しい。それでも、しっかり勝ち切ったのは、さすがです。

 弟としては相手が誰であっても心配はする。絶対に勝つと信じていても、8オンスのグローブだし、一発もらえば何が起こるか分からないのがボクシングだから。家族みんな同じだと思うけど、無事に勝ってくれると、やっぱりホッとするよね。ナオも「自分の試合よりタクの試合の方が、緊張も心配もする」って言っていたから、お互いさまかな。

 2年前、ナオがドネアとWBSS決勝、自分はウバーリとの王座統一戦で、初めての兄弟ダブル世界戦だった。本当は勝ってナオにバトンをつなぎたかったけど、負けちゃって。でも、すぐにナオの試合があったから気持ちを切り替えなくちゃいけなくて。変な雰囲気を伝えたくなかったから控室では「ゴメン」とだけ言ってグータッチして一緒に入場したのを覚えている。

 2年前のあの負けは、本当に凄く悔しかったけど、自分のボクシングを見直すきっかけになったし、「負けて強くなった」と言われるようになりたいと思っている。幼い頃からずっとナオを追いかけて、ナオと同じ練習をしていれば、ナオみたいになれると思っていたけど、今は一人のプロボクサーとしてやっぱり自分は自分だし「井上拓真」としてのボクシングを確立させるために、もっと、いろいろ考えてやらなきゃダメってことに気づかされた。ナオは井上家のボクシングの完成形に近づいているので、もちろん、そこは目指すところではあるけど。

 本音を言うと、ナオの弟であることが嫌な時期もあった。自分がプロになってマスコミにいろいろ比較されるようになった頃かな。でも、今はそれが一番の自分のモチベーションになっているのは間違いない。ナオの一番近いところにいて、こうして刺激をもらえるから。

 ラスベガスでの2試合もサポート役として同行させてもらったけど、環境が変わっても、いつも通りの調整をして、いつも通りの力を発揮できるのは本当に凄い。また、同じ舞台に立てるように、兄弟世界王者になれるように、僕も頑張ろうと思っています。(元WBC世界バンタム級暫定王者)

 ◇井上 拓真(いのうえ・たくま)1995年(平7)12月26日生まれ、神奈川県座間市出身の25歳。13年12月にプロデビューし、15年7月にプロ5戦目で東洋太平洋スーパーフライ級王座獲得。18年12月にWBC世界バンタム級暫定王座を獲得したが、19年11月、正規王者ウバーリ(フランス)との王座統一戦で判定負け。今年1月に東洋太平洋バンタム級王座、11月にWBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級王座を獲得した。身長1メートル64、リーチ1メートル63の右ボクサーファイター。

 ▼井上真吾トレーナー(尚弥の父) 率直に相手が凄く頑張った。根性(があった)。今後に関しては会長が決めた試合に対して準備する。

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2021年12月15日のニュース