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井上尚弥 8回TKO完勝も謝った…「期待と予想を下回る試合をしてすみません」

[ 2021年12月15日 05:30 ]

WBA&IBF世界バンタム級タイトルマッチ12回戦   〇井上尚弥 TKO8回2分34秒 ●アラン・ディパエン ( 2021年12月14日    両国国技館  )

7回、アラン・ディパエン(右)に左フックを見舞う井上尚弥(撮影・島崎 忠彦)
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 WBA&IBF世界バンタム級統一王者・井上尚弥(28=大橋)が2年1カ月ぶりの日本凱旋を白星で飾った。アラン・ディパエン(30=タイ)に8回TKO勝ちし、WBA6度目、IBF4度目の防衛に成功。反省の弁も目立ったが、世界戦17連勝で、自身の日本最多記録を更新した。課金制のペイ・パー・ビュー(PPV)でのライブ配信も敢行し、来春に計画されるビッグマッチの実現へ存在をアピールした。

 モンスターがパンチを放つたび、両国国技館は熱気を帯びる。挑戦者は驚くほどタフだが、それでも倒しにいく井上の強烈かつ多彩な攻撃がファンを魅了した。クライマックスは8回。左ボディーで下がらせ、追撃の左フックでダウンを奪う。立ち上がったディパエンに左フックを打ち込むと、レフェリーが試合を止めた。ただ、会場と王者の間には大きな温度差があった。

 「期待と予想を下回る試合をしてすみません。判定も頭によぎりました。俺、パンチないのかな?と感じてしまうくらいタフでした。本当に(パンチが)効いているのか、こっちがメンタルやられそうでした」。期待された圧倒的パフォーマンスには不十分。井上が一番理解していた。

 そんな試合で生きたのはコロナ下に磨いたリードジャブだ。「左ストレート」と表現されるほどの強さがある上、8月の京都合宿でラグビーのスクラム強化に使用される器具を使ったトレーニングに取り組んだ。背筋は一層たくましくなり、破壊力は増した。2回以降はリードジャブを突破口に左フック、右アッパーを繰り出した。中盤からは父の真吾トレーナーの指示もあってボディー攻撃や、あえて打たせてからのカウンターと引き出しの多さも見せつけた。

 直近2試合は米ラスベガスでの戦いだった。コロナ禍に見舞われた2年間は今回を含めて3試合だけで、望んだ相手との対戦はかなわなかった。4団体統一の野望に近づいたとは言い難いが、井上は進化を続けてきた。

 過去タイ人との世界戦は14年9月のサマートレックは11回、16年9月のペッチバンボーンは10回とKOにはラウンドを要した。今回も同様だが、内容は危なげない完勝劇。井上は「2年ぶりの日本のリングで8回まで楽しくやれたので良かった」と前向きだった。

 視線の先にあるのは4団体バンタム級統一という野望だ。WBC王者ドネアが12日に暫定王者ガバリョを破った直後、井上はSNSに「ドネア2(再戦)は必ず実現させる」と投稿。この日、大橋会長は「ドネアが最有力だけど、WBOがカシメロにどんな裁定を下すかにも注目している。こじれたらスーパーバンタムに上げることも考える」と含みも持たせた。

 井上の望みは「ファンが見たいと望む試合をすること」。まずは来春のビッグマッチ実現を目指していく。

 ◇井上 尚弥(いのうえ・なおや)1993年(平5)4月10日生まれ、神奈川県座間市出身の28歳。新磯高(現相模原弥栄高)時代に高校7冠などアマ通算81戦75勝(48KO・RSC)6敗。12年10月プロデビュー。14年4月にプロ6戦目でWBC世界ライトフライ級王座獲得。同12月にWBO世界スーパーフライ級王座を獲得して8戦目で2階級制覇。18年5月、WBA世界バンタム級王座を獲得して3階級制覇達成。19年5月にIBF同級王座獲得、同11月にはWBSSバンタム級トーナメント優勝。身長1メートル65、リーチ1メートル71の右ボクサーファイター。

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