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王者・井岡のドーピング疑惑 いまだに“出口”見えず

[ 2021年5月11日 08:30 ]

昨年大みそかのWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチで2度目の防衛に成功した井岡一翔
Photo By スポニチ

 どんな決着となるのだろうか?プロボクシングWBO世界スーパーフライ級王者・井岡一翔(32=Ambition)のドーピング疑惑が発覚して半月が過ぎたが、いまだに“出口”は見えてこない。

 試合が行われたのは昨年大みそか。田中恒成(畑中)との一戦は年間最高試合にも選ばれたが、井岡のタトゥーが露出したことから、日本ボクシングコミッション(JBC)は1月21日付けで井岡を厳重注意処分としている。それから4カ月以上過ぎて、井岡の尿検体から大麻成分などの禁止薬物が検出されたと報じられた。井岡サイドは不正な薬物の意図的な摂取を否定。JBCは倫理委員会の設置を明かしたが、それ以外は「審議に影響を及ぼす」として明らかにしていない。田中が所属する畑中ジムからの質問書への返答も「中身はゼロ回答」(畑中清詞会長)だったという。

 事実関係が隠されたままで、不可解な点が多い今回の騒動。ボクシング界に精通するスポーツドクターや日本アンチ・ドーピング機構(JADA)の公認スポーツファーマシスト(最新のアンチ・ドーピング規則に関する知識を有する薬剤師)ら何人かの専門家に意見を求めると、検査の過程で警察が介入していることを疑問視する声が少なくない。JBCはJADA非加盟のため、検査は国際基準に則ったものではないが、尿検体をAとBの2つ採取する方法は同じ。仮に違法性のある物質が検出されたとしても、検査結果の確定前に警察に相談したのなら、手順を誤ったと言わざるを得ない。

 一方、井岡サイドがCBDオイルから大麻成分が検出された可能性があるとしていることに、首をかしげる専門家もいた。大麻成分のうち特に規制対象となる物質は興奮作用が強いTHC(テトラヒドロカンナビノール)で、CBD(カンナビジオール)は中枢への作用はなく、2018年1月からアンチドーピングの禁止物質から除外されているという。ただし、CBDオイルにTHCが混入することもあるそうで、「プロのアスリートがリスクを冒して使用するのは疑問。周りにスポーツファーマシストなりサポートする人がいるはず」と指摘した。

 JBCの永田有平理事長は今月中に倫理委員会の結論が出るとしている。仮に“クロ”という結論の場合、試合は無効となり、王座は剥奪、ライセンス停止などの処分を科される可能性がある。そうなれば、井岡サイドの猛反発は必至だ。逆に“シロ”でもグレーの印象が残ったままでは納得できないのではないか。もちろん、田中陣営も簡単には承服しないだろう。“落としどころ”は難しい。

 禁止薬物に陽性反応を示したのが事実なら、違反の有無は別にして、井岡サイドにも責任の一端があることは否定できない。だが、今回の混乱を招いた最大の原因はJBCの不手際。倫理委員会がどのような結論を出そうとも、JBCにはこれまでの経緯や結論に至った理由などを丁寧に説明する責務がある。(記者コラム・大内 辰祐)

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2021年5月11日のニュース