禁止薬物陽性から再起へ 尾川堅一の今「世界王者になることが一番の恩返し」
2019年のボクシング界は年頭から米国での世界挑戦が続いた。18日(日本時間19日)には高橋竜平(横浜光)がIBF世界スーパーバンタム級王者TJ・ドヘニー(アイルランド)に、26日(同27日)には井上岳志(ワールドスポーツ)がWBO世界スーパーウエルター級王者ハイメ・ムンギア(メキシコ)に挑んだ。どちらも王座獲得はならなかったが、その挑戦に拍手を送りたい。
過去に海外で世界王座を獲得した日本人ボクサーは、昨年大みそかにマカオでWBA世界ライトフライ級王者となった京口紘人(ワタナベ)で11人12例目。米国に限定するとホノルルで王座奪取した柴田国明(ヨネクラ)を含め4人だけだが、昨年7月に伊藤雅雪(伴流)がWBO世界スーパーフェザー級王座を獲得。37年ぶりに米国での王座奪取に成功したことで、チャレンジは今後も増えるかもしれない。
その伊藤に大きな影響を与えたのが尾川堅一(帝拳)の存在だ。尾川は17年12月にIBF世界スーパーフェザー級王座決定戦で判定勝ち。後に禁止薬に陽性反応を示したことから無効とされたが、同じ階級のライバルだった尾川の勝利に伊藤は大きな刺激を受けた。そしてまた、その後の伊藤の躍進は尾川にも刺激を与えている。
禁止薬物に陽性反応を示したとは言え、パフォーマンス向上を狙った故意のものではなく、申告漏れという過失だったが、尾川には米国ネバダ州コミッションから6カ月間の出場停止、日本ボクシングコミッション(JBC)からは1年間のライセンス停止処分が下された。
処分後、尾川は約半年間ボクシングを離れ、自分自身と向き合った。不安に押しつぶされ、何度も心が折れそうになった時もあったが、「この期間がプラスになったと思えるように過ごしてきた」と振り返る。そして「チャンピオンにならなければ復帰した意味がない。世界王者になることが一番の恩返し」と誓った。
昨年12月、ようやくJBCからの処分も解除された。年末には伊藤の初防衛戦を観戦し、あらためて「そこが自分の目指す場所であり、目指さなきゃいけない場所だと感じた」という。復帰戦は2月2日、後楽園ホールでフィリピン・ライト級王者ロルダン・アルデアと対戦する。天国から地獄へ突き落とされ、再び這い上がるためにリングに立つ尾川の戦いに注目している。(大内 辰祐)
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