山中慎介氏が語るロマチェンコVSペドラサ戦見どころ「左ボディーブローが決まれば…」
日本時間9日、米ニューヨークでWBA世界ライト級王者ワシル・ロマチェンコ(30=ウクライナ、12戦11勝9KO1敗)―WBO同級王者ホセ・ペドラサ(29=プエルトリコ、26戦25勝12KO1敗)の王座統一戦が行われる。
アマチュアで08年北京五輪、12年ロンドン五輪を連覇、プロでは12戦目で3階級制覇を成し遂げているサウスポーの天才、ロマチェンコ。ペドラサもアマチュア時代には世界選手権準優勝、北京五輪出場の実績を持ち、プロでは2階級で世界王座を獲得している。現代ボクシングの最高傑作ともいわれ、「ハイテク(高性能)」のニックネームを持つロマチェンコか、それとも左右どちらの構えでも戦える「スナイパー(狙撃手)」ペドラサか。注目のライト級王者対決について、元WBC世界バンタム級V12王者、山中慎介氏に見どころを聞いた。
――山中さんはロマチェンコに関してどんな印象を持っていますか。
「今までのボクサーには、あのような動きをする――ダンスみたいに細かいステップで、かつ相手がついていけないリズム。そして、どんどんギアを上げていく――選手がいませんでしたよね。加えてロマチェンコは足が速いだけでなく、もちろんパンチも速い。そして、ここというときには強いパンチも打てる、そんなイメージですね。相手を翻ろうして諦めさせることが多く、一発KOの印象は薄いんですが、ローマン・マルチネス(プエルトリコ)戦のように豪快に倒すこともありますから」
――あのボクシングはアマチュア(397戦396勝1敗)経験がベースになっていると考えることができますよね。
「その戦績はホントかな?と思いますよね(笑い)。オリンピックで連続金メダルでしょう。去年は同じオリンピック連覇のギジェルモ・リゴンドー(38=キューバ)にも勝っているし。どこまで高いレベルの選手なんだと。なかなか苦戦するイメージが湧かない選手ですよね」
――数少ない苦戦の1つが今年5月のホルヘ・リナレス(33=帝拳)との試合でした。
「ホルヘ(リナレス)とは一緒にトレーニング・キャンプにも行ったし、もちろんジムワークでも一緒だったりしたので、ほかの人とは違う感情であの試合を見ました。だから6ラウンドにホルヘがダウンを奪ったときはソファーから立ち上がってしまいました。ロマチェンコが10回TKO勝ちを収めたわけですが、それまではポイントも競っていましたよね(三者三様)。世界チャンピオンのなかでも頭一つ抜けた者同士の対戦だったので、本当に面白い試合でした」
――あの試合でロマチェンコは右肩を痛め、試合後に手術しました。今回、その影響は考えられますか。
「12月に試合をすると決めたほどだから問題はないんじゃないでしょうか。しっかりトレーニングをしているだろうし、だから不安もないのでは。影響はないと思います」
――対戦相手のペドラサ(26戦25勝12KO1敗)については、どんなイメージを持っていますか。
「スーパーフェザー級時代に1敗はしていますが、そのデービス(ジャーボンテイ・デービス=現WBA世界スーパーフェザー級王者)戦でも持ち味は出していたと思います。ペドラサに関しては、第一に“長い”という印象ですね。長いというのは距離のことなんですが、そうではない中間距離や接近戦でもアッパーやフックが打てる選手ですね。タイトルを奪ったレイムンド・ベルトラン(37=メキシコ)戦でも狙いすました左アッパーでダウンを奪っていますから。あれは得意なパンチの1つですね。今回も狙ってくるのではないでしょうか。相手がロマチェンコとなるとそう簡単に当たるとは思えませんが、タイミングがいいので警戒させるだけでも意味があるでしょう」
――体格を見てみると、身長1メートル73/リーチ1メートル80のペドラサに対し、ロマチェンコは1メートル70/リーチ1メートル66と差があります。この体格差は影響しそうですか。
「ロマチェンコの身長は実際には1メートル70はないでしょうね。ホルヘと戦ったときも開始前には体格差を感じましたが、試合が始まってみるとそんなことを忘れさせるような戦い方をしました。だから影響はないのではないかと思います」
――ペドラサは右構えでも左構えでも戦えるスイッチヒッターですが、今回はどちらが有効だと思いますか。
「ロマチェンコが相手となると最初は距離をとりたいはず。そのためにも右構えでスタートするのではないかと思います。サウスポー同士で向き合うよりも右構えだと左ジャブで相手との距離がとれるので。そして状況を見ながら左構えにスイッチする可能性が高いのではないでしょうか」
――どんな展開を予想しますか。
「あくまでも僕の展開予想ですが…。まずペドラサが距離をとって様子を見る。ロマチェンコは軽く触るようにパンチを当てながら距離を測って徐々にリズムを上げていく。ロマチェンコは相手の力が分かると自分から前に出て接近戦を試したりするので、そこからが勝負でしょう。ロマチェンコのパンチで一番威力があるのはホルヘを倒した左ボディーブローだと思うので、その巻き込むように入るボディーブローが決まれば勝利に大きく近づくと思います」
――ペドラサにもチャンスはありますか。
「ペドラサに関して注目したいのは、まず左右どちらの構えでスタートするのかという点ですね。そしてロマチェンコの足さばき、動きに対してどうパンチを当てようとするのか。そのあたりがカギになると思います。サウスポーで戦う場合でも右ジャブは重要になるでしょう。ペドラサにとって厳しい戦いになることが予想されますが、ロマチェンコが接近してきたときには逆にチャンスも生まれると思います。“接近戦=ロマチェンコが足を止める瞬間”でもあるので。ペドラサもショートレンジでの戦い方がうまいので、番狂わせが起こるとしたら近距離での戦いになったときではないでしょうか。タフなベルトランからダウンを奪った左アッパーは大きな武器ですよね」
――山中さんなりのオッズ、そして勝敗予想を。
「オッズは5対1ぐらいでロマチェンコ。結果予想としては、デービスが(ペドラサに)7回TKO勝ちですよね。それを参考にすると…。ロマチェンコの12回判定勝ち。ペドラサが頑張ると思いますよ」
WOWOWでは、このビッグマッチを「エキサイトマッチスペシャル ボクシング史上最高傑作 ロマチェンコ統一戦!」として9日(日)正午から生中継する。また24日(月・休)には、今年のベストマッチが決定する「エキサイトマッチ〜世界プロボクシング 2018年総集編」を放送!
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