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長谷川穂積が受賞する可能性があった“幻の賞”とは

[ 2017年2月11日 16:01 ]

特別功労賞の長谷川穂積(左)と最優秀選手賞の山中慎介
Photo By スポニチ

 プロボクシングの2016年度年間表彰式が10日、東京ドームホテルで開かれた。昨年までは表彰選手が選考会で決まった時点で発表されており、表彰式は表彰するだけの場だったが、もっと式を盛り上げたいとの日本ボクシングコミッション(JBC)の意向により、今年度は表彰選手を当日に式の中で発表するスタイルに変更した(特段ショーアップされたわけではなく、盛り上がりも例年と特に変わらなかったのだが)。また、王座奪取か防衛に成功した世界王者は「優秀選手」として全員表彰し、その中から「最優秀選手(MVP)」などを選ぶ方式に変わった。

 表彰選手は通信社、一般紙、スポーツ紙、テレビ局、専門誌の各ボクシング担当者の投票によって決まる。選考会は都内で開かれ、部門ごとにノミネートされた選手・試合に票を投じ、事前に集められていた関西地区の記者の票と合わせて過半数の選手(試合)が出れば決定。過半数に達しなければ上位で決戦投票を行う仕組みだ。1月下旬に開かれた選考会では、「MVP」こそWBC世界バンタム級王者・山中慎介(帝拳)がすんなり選ばれたが、「技能賞」「殊勲賞」「努力・敢闘賞」「KO賞」は軒並み決選投票にもつれ、そのたびに選考会に出席している記者が関西の記者に連絡して誰に投票するか聞く手続きが取られた。

 「殊勲賞」は無敗の前王者を破ってIBF世界スーパーバンタム級王座を獲得した小国以載(角海老宝石)と、WBC世界同級王座を獲得して3階級制覇を達成した長谷川穂積(真正)の決戦投票となった。最後は関西の記者の投票により1票差で小国となったため、「2人が受賞でもいいのでは」という声も上がったが、「MVP」「技能賞」「殊勲賞」は1人が望ましいとの意見が大勢を占めた。一方で「KO賞」は山中とWBA世界フライ級王者・井岡一翔(井岡)が2度目の決戦投票でも同数のため、ダブル受賞が決まった。

 「殊勲賞」からは漏れた長谷川だったが、王者のまま現役を引退した功労者に対し、JBCからは表彰部門にない「年間最高ラウンド賞」をもうけて表彰してはどうかという提案があった。昨年9月16日のWBC世界スーパーバンタム級タイトルマッチで、壮絶な打ち合いの末に前王者ウーゴ・ルイス(メキシコ)がラウンド終了後に棄権を申し入れた9回は日本ボクシング史上に残るシーン。「年間最高ラウンド賞」は米専門誌などではおなじみで、“長谷川の9回”なら初代受賞としてふさわしかった。しかし、タイトルマッチ以外の試合もつぶさにチェックする記者が少ない現状では「年間最高ラウンド=年間最高試合」になりがちとの見方から、賞の創設は見送られ、代わりに「特別功労賞」として表彰する形になった。

 「最高ラウンド」の認知度が高まり、ファンや関係者の間で議論になるのなら、将来的には表彰対象にしてもいいのではないか。海外でも派手な試合が選ばれることの多い賞ではあるが、ノンタイトル戦が受賞した例もある。タイトル戦とは無縁のボクサーに表彰のチャンスが生まれるのなら、日本でも賞を創設する意義はあると思う。(専門委員・中出 健太郎)

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2017年2月11日のニュース