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長谷川157秒でV8!がん闘病中の母に贈った

[ 2009年3月13日 06:00 ]

1回、長谷川穂積のパンチがブシ・マリンガの顔面にヒット

 WBC世界バンタム級タイトルマッチが12日、神戸ワールド記念ホールで行われ、王者・長谷川穂積(28=真正)が同級1位のブシ・マリンガ(29=南アフリカ)に1回TKO勝ち。83年にWBAスーパーフライ級王者・渡辺二郎が記録して以来26年ぶりの3連続KO防衛で、日本のジム所属王者として歴代3位の8度目の防衛に成功した。

 静かな立ち上がりが、一発で修羅場と化した。初回1分すぎ、長谷川の左ストレートがきれいにマリンガの顔面をとらえた。大げさでなく、リング中央からコーナーまで吹っ飛ばした。連打で2度目のダウンを奪うと、最後は左フックで仕留めた。157秒のTKO勝利に「こんなに早く終わるとは思わなかった」。指名挑戦者を退けた王者の顔に傷一つなかった。

 「前回、前々回と2回で終わった。後半のスタミナとか不安だったから、今回は長いラウンドを試したかった…」。コメントの憎らしさも、6度目の防衛戦が318秒、7度目は341秒の実績が打ち消す。具志堅用高、渡辺二郎に次ぐ国内3人目の3連続KO防衛は26年ぶりで、防衛8度は歴代3位の快挙だった。

 「KOは狙ってなかったが、記録に並んだのはうれしい」。そう胸を張ったが、何よりも長谷川が喜んだのは、母・裕美子さん(53)の目の前で勝てたことだ。一昨年11月からがんと闘う母は、これまで大腸がん、卵巣がんを手術し、ことし1月末からは肺がんの放射線治療のため、3週間、入院した。

 リング上で「父親も母親も、いろいろ不安を抱えている。しっかりいい形で勝って安心させたかった」と声を掛けた。手術と入院の費用を出した息子に対し、母は病身をおして試合前日に兵庫県西脇市の自宅で3時間の草むしりをした。「穂積も頑張ってる。わたしも頑張ったらええことあるかなと思って」。リングサイドで勝利を見届け「ただ、ご苦労さまと言いたい」と喜んだ。

 長男・大翔くんの幼稚園卒園式にきれいな顔で出席し、小学校の入学式に世界王者として出る目標もかなえた。今後は2階級制覇を狙う構想もある。「目標は防衛じゃなく、強くなること」という長谷川には、それを支える家族がいる。

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2009年3月13日のニュース