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涙のリベンジ!天才・粟生ついに世界獲った

[ 2009年3月13日 06:00 ]

試合終了のゴングを聞いた粟生隆寛は勝利を確信し、うれし涙を流す

 日本ボクシング界にニューヒーローが誕生した。5カ月ぶりの再戦となったWBC世界フェザー級タイトルマッチが12日、東京・後楽園ホールで行われ、粟生隆寛(24=帝拳)が王者オスカー・ラリオス(32=メキシコ)に3―0の判定勝ち。前回の雪辱で世界王座を奪取した。

 試合終了のゴングを聞くと、粟生はキャンバスに突っ伏して号泣した。肩車されても、インタビューでも声をあげて泣き続け、トレーナーからしかられた。「支えてくれた皆さんのおかげ。あと、お父さんとお母さん、ありがとう…」。最後まで声にならなかった。
 最大12点差がつく文句なしの判定勝ち。それでも「詰めの甘さを直さないと上には行けない。ベルトは重いし、メチャかっこいいけど」と声を絞り出した。最終回、右フックからの左ボディーでダウンを奪ったが、KOは逃した。世界を獲っても、5カ月前の挫折は忘れられなかった。

 3歳の時、ジムの練習生になるほどボクシング好きだった父・広幸さん(49)からおもちゃのグローブを与えられた。自宅の庭にはサンドバッグ。サッカーや野球を楽しむような感覚でボクシングにのめり込んだ。千葉・習志野高では1年秋から58連勝で史上初の高校6冠を達成。日本人離れした防御が持ち味で、しなやかに上体を操りパンチを外すテクニックをプロ入り前に身に付けていた。カウンターを打ち込むセンスも抜群。だが、それだけでベルトを獲れるほど世界は甘くなかった。

 無敗のまま世界初挑戦した昨年10月のラリオス戦。4回にダウンを奪いながらも詰め切れず、1―2の判定で高1の秋以来8年ぶりの敗戦を喫した。「ダウンを奪って逆に動揺してしまった。行くべきところは自分から仕掛けてきっちり仕留めないと」。それまで被弾することを恐れ、踏み込みが浅かったステップの幅を約5センチ広げた。打たれ強さを身に付けるため首の筋力強化にも取り組み、5カ月で首回りが1・5センチも太くなった。スピードあふれる左ストレートで常に先手を取り、6回からラリオスが仕掛けてきた接近戦にも応じた攻撃的な姿勢こそ、成長の証だった。

 初防衛戦は指名試合で同級1位エリオ・ロハス(ドミニカ共和国)を迎えることが有力。「強い王者。何回も防衛できて海外からも警戒される選手になりたい」。早熟の天才ボクサーは防衛を積み重ね、さらに進化を遂げる。

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2009年3月13日のニュース