【内田雅也の追球】見せつけた「アブ」の力

[ 2025年9月20日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-0DeNA ( 2025年9月19日    甲子園 )

<神・D23> 2回、大山は二盗に失敗する(撮影・大森 寛明)
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 DeNAのアンドレ・ジャクソンは難敵である。阪神戦は今季過去5試合で2勝1敗、防御率2・35、被打率・200。クライマックスシリーズ(CS)で当たればやっかいな投手だ。

 攻略の糸口として、いわゆる足攻めがカギを握る。この夜の先取点にヒントが隠れていた。

 0―0の4回裏1死一塁(走者・森下翔太)、打者・大山悠輔の場面。投球を振り返ってみる。印は○ストライク、●ボール、◎空振り、Fファウル、そして「ケ」はけん制球である。

 ケ○ケ◎Fケ●ケ●Fケ●●

 大山は2球で追い込まれながら四球を得ていた。この間、実に5球も一塁けん制球を放っている。走者を警戒したあまり、制球を乱したと言っていいだろう。

 森下は決してよく走る走者ではない。今季の盗塁は5個でしかない。ただ、リードの取り方や偽走スタートで揺さぶった。フルカウントになって初めてランエンドヒットの形で走ったのだった。

 ではなぜ、ジャクソンや捕手・松尾汐恩、さらにDeNAベンチは、これほど警戒したのか。

 背景に2回裏、2死一塁での大山盗塁憤死があったとみる。打者・高寺望夢の0―1からの2球目、大山は走った。アウトとなったが、与えた印象は強かったはずだ。大山は今季盗塁6個。“大山も走ってくる”と思わせる効果があった。だから、4回裏の森下をあれほど警戒したのである。

 リーグ最多66個目の大山の四球は格好のつなぎ役となった。一、二塁と好機が広がり、ジャクソンはまた二塁けん制の偽投を行っている。こうして2死後、高寺が右前適時打を放ったのだ。

 こうした「うるさい走者」を大リーグでは「アブさん」と呼ぶ。虫のアブである。1960年代、6年連続盗塁王となったモーリー・ウィルス(ドジャース)を例に<アブさんは投手の気を散らして味方の快打を狙わせる>。日米球界の架け橋となった鈴木惣太郎が63年3月1日付で本紙に寄稿していた。

 ジャクソン降板後も阪神はよく走った。5回裏2死一塁では佐藤輝明がスタート(打者三振)、6回裏2死一塁では代走・熊谷敬宥が二盗憤死。盗塁成功はなかったが計4度走った。今季、DeNA戦はカード別最多の20盗塁を記録している。
 CS前哨戦。相手に見せつけるように走ったのである。 =敬称略=
 (編集委員)

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