【内田雅也の追球】敵は己の「夏休み」

[ 2025年7月22日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5-6巨人 ( 2025年7月21日    東京D )

阪神のマジックナンバー点灯を報じる08年7月23日付大阪版1面
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 5点差を追いつかれたうえのサヨナラ負けに阪神監督・藤川球児はロッカーに集合をかけた。

 「前半戦は非常にいい戦いだった」と選手、スタッフをねぎらった。オールスター・ブレーク前の最終戦。夏休みを前に「よくできました」の通知表を渡すようである。

 「10試合やって1つこんな試合があっても、残りの7、8、9個いい試合ができればいい。ペナントレースとはそんなものだ」。同じことを大リーグ歴代2位、監督通算2902勝のトニー・ラルーサが語っている。「1つの負けがその後のシーズンに影響を与えることなどありえない。野球にがっくりは付き物だ。問題はその後だ」。確かに、その通りだ。

 ポイントは7回裏だった。6回まで二塁さえ踏ませなかった先発・伊藤将司が3連続長短打を浴びた。味方の失策も絡んで2失点。1死一、三塁を残して降板となった。

 2番手で起用したのは右腕ニック・ネルソン。対した打者リチャードは今季、右投手に対し、24打数無安打だった。代打もある場面だが、巨人監督・阿部慎之助は動かず、リチャードにかけた。

 得意のチェンジアップで追い込み、勝負球もチェンジアップ。低めにいったが、何と左中間席まで運ばれ、まさかの同点3ランとなった。

 直後の8回表1死一、二塁。代打・原口文仁に阿部はシュートを武器に右打者に強い田中瑛斗できた。藤川は代打の代打で高寺望夢を送った。田中瑛は左打者に被打率3割7分と苦手で、原口でも代えた。だが、高寺は三振、近本光司一ゴロで勝ち越し機は去った。

 用兵を含め、藤川は「常にベストは尽くしている」と話した。だが、データの有利不利など吹き飛ぶ結果だった。「まさか」は日常にひそむ。

 きょう22日は“あの”2008年、巨人に4点差を逆転勝利し、優勝へのマジックナンバーを点灯させた日だった。87試合目で、57勝29敗1分け。貯金実に28個、勝率6割6分3厘もあった。後に「メークレジェンド」の逆転優勝を許す巨人とは7月8、9日で最大13ゲーム差。この時点でもまだ12差をつけていた。

 当時監督の岡田彰布は9月5日、広島に敗れた夜、「突然、恐怖に襲われた」と明かしている。

 現在53勝35敗2分けで、リーグの貯金を独占する。2位DeNAに9・5差。無敵と映るが、敵は己の中にあるともみている。 =敬称略=
 (編集委員)

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