【内田雅也の追球】忘れること、覚えること

[ 2025年5月25日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4―5中日 ( 2025年5月24日    バンテリンD )

<中・神>9回、代走を告げる藤川監督(撮影・須田 麻祐子)
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 最後は判定で後味の悪い幕切れとなった。9回表、1点差に迫り、なお2死二塁。中野拓夢フルカウントからの1球はストライク。見逃し三振で試合終了となった。

 内角直球でコースはボールに見えた。珍しく中野が不満な態度を示したのも理解できた。

 敗戦後、監督・藤川球児が納得いかない理由を語った。審判員への敬意を忘れず尊厳を損なわないよう気を配っていた。

 この9回表先頭、代打・渡辺諒がフルカウントから選んだ1球。真ん中低め直球でストライクに見えたがボール判定だった。球審は右手をあげかけていた。中日監督・井上一樹が球審に歩み寄り、ただしていた。

 「抗議があって最後(ストライクを)とったというふうに思われても仕方ない」。埋め合わせをしたのではないかという不満なのだ。「感情が入っているとすれば、フェアじゃないですよね」

 審判員はホークアイでもテレビのスローVTRでもない。人間なのだ。間違いもあるだろう。

 それにストライク・ボールの判定は覆らない。試合は戻らない。この部分はもう忘れたい。

 試合を思えば、3―3同点で登板した新人・工藤泰成が敗戦投手となった。先頭打者に0ボール2ストライクからファウルで粘られ四球。無死一塁からバントをファウルさせ1ボール2ストライクから二塁打された。狙った初球内角高め速球を2点打された。

 藤川は「経験していくしかない」と語った。「今の彼の出番で、チャンスでもあった。全部同じ投手は無理ですから」。この日は連投中の湯浅京己をベンチから外した。入れ替えの激しい救援陣で工藤には試練であり、チャンスなのだ。

 前を向く考え方を『アンパンマン』の原作者・やなせたかしが示している。「僕はサンカク人生」と自負していた。「絵を描く、詩を書く、恥をかく」の3つのカクだとNHK『視点・論点』でノンフィクション作家・中野晴行が紹介していた。「恥をかきたくないのは失敗したくないからだろ? でも失敗してもいいんだ。失敗したら、それをやらしたほうが悪いと思えばいいんだよ」

 落合博満や栗山英樹らもよく「使った監督が悪い」と言った。選手たちは失敗しながら経験し成長していくわけだ。

 だから判定は忘れ、経験は忘れずに覚えておきたい。 =敬称略= (編集委員)

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