焼肉店で出た「諦めている」本音…プレッシャーを乗り越えた健大高崎・向井翔が横浜戦で初先発

[ 2025年3月28日 10:32 ]

横浜戦で初先発する向井
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 史上4校目の春連覇を狙う健大高崎は27日、兵庫県西宮市内で約2時間の練習を行った。前日の花巻東(岩手)戦では代走で途中出場し、初打席初安打を放った向井翔外野手(3年)は打撃練習などで汗を流した。

 きょう28日の横浜との準決勝に向け、「関東の決勝で負けた相手なので、チーム全員で勝ちに行き、勝利に貢献できるようなプレーをしたいと思います」と意気込んだ。

 初めて立った聖地は美しく、雄大だった。花巻東との準々決勝、向井は8回に代走で甲子園初出場すると、その回に打線爆発。8点リードで迎えた9回1死で向井に初打席が回った。1ボールからのチェンジアップは空振り。大きく深呼吸すると、2ボール1ストライクからの内角直球を思い切り引っ張った。ライナーで緑の芝を弾んだ右前打。一塁上でクールにガッツポーズした向井。「あんまり打撃を期待されているわけじゃないので、積極的に振ろうとした結果です。自分の打球に上がる歓声が気持ちよかった」と最高の瞬間をかみしめた。1カ月前には想像できなかった笑顔がはじけた。

 時は2月中旬、選抜メンバーの選考真っ最中の時期に記者は健大高崎のグラウンドを訪れた。投手陣は最速158キロ右腕・石垣元気(3年)、最速145キロ左腕・下重賢慎(3年)を中心に陣容が固まりつつあったが、外野手は予想が難しかった。昨秋は4番も張った左翼手の佐伯幸大(3年)が冬の練習期間に故障していたこともあり混戦模様だった。外野手として調整する佐藤龍月(3年)らの状態をチェック。取材が終わり、東京への岐路に着く前に、同校から近い焼肉店で夕食をとることにした。

 ガラッと入口を開けると、さすが野球部のなじみの店。投手の島田大翔(3年)、佐伯幸大(3年)、そして向井が着席していた。食べ盛りの高校生にとって焼肉はテンションマックスになるはず。ただ、向井だけは暗い顔で食べ進めていた。

 3月上旬に最終決定される選抜のベンチ入りメンバー。中堅手・石田雄星(2年)、右翼手・栗原朋希(3年)のレギュラーは不動で、左翼手は打撃に優れる佐伯、2年生ながら力をつけてきた佐藤麻恩、守備力の高い鶴岡太一朗(3年)、そして俊足を武器にする向井らが候補に挙がっていた。
 
 投手は4人のベンチ入りが予想されたが、もし余裕を持って5人体制を敷いた場合は外野手から削られる可能性が高い。それだけに焼肉屋で向井の箸は進まなかったのだ。グラウンドでは精一杯のプレーを続けていたが、一息つける食事の場では本音が出るもの。「マジ、メンバー入りに自信がない…ちょっと諦めている」と自嘲した。茨城県霞ケ浦市出身で、故郷のいる家族の期待も背負う17歳。信頼する仲間に漏らした本音だった。

 ただ、「諦めている」わけがなかった。カルビ、ハラミ、そして大盛りのご飯をモリモリ食べれば、元気が出る。元気があれば何でもできる。「ごちそうさまでした!」と元気よく言い、店を出た向井の瞳には再び、闘志が宿っていた。

 最終メンバー決定のギリギリまで「ここで落ちたらダメだ」とアピールを続け、背番号15でメンバー入りした選抜。準々決勝の花巻東戦で初出場初安打をマークすると、試合後の取材エリアでは「打率10割男っす!」と笑っていた。

 そして横浜との準決勝。「チーム全員で勝ちきりたい」と意気込んでいた向井。なんと「7番・左翼」でスタメンに抜てきされた。メンバー入りのプレッシャーを乗り越えた男にふさわしい舞台が用意された。(アマチュア野球担当・柳内 遼平)

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