阪神・梅野 引退決断、能見の教えを体現する激烈プレー 心に刻む師匠の言葉「お前の出すサイン…」

[ 2022年9月15日 07:00 ]

セ・リーグ   阪神6-5広島 ( 2022年9月14日    甲子園 )

<神・広>5回無死満塁、糸原の左飛で同点の生還を果たす梅野。捕手会沢(撮影・北條 貴史)
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 阪神は14日、広島戦に6―5で勝利し、3位を死守した。敗れればリーグ優勝が完全消滅する一戦で、梅野隆太郎捕手(31)が、1点劣勢の6回に決勝の逆転2点三塁打。守っては8回に同点の暴投を阻止するブロッキングを見せるなど、攻守に存在感を発揮した。残り8試合。クライマックスシリーズ(CS)進出へ、頼れる正妻が猛虎の再加速を後押しする。

 崖っ縁のチームを“救出”する快音が響いた。右中間を切り裂いた梅野の打球。1点劣勢の6回1死一、二塁で森下の渾身(こんしん)の直球をはじき返した。

 「長打を打てたというよりも(試合を)最終的にモノにできて良かった」

 序盤から得点を奪い合う、3位争いにふさわしいスリリングな展開。負ければ17年連続のV逸が決まる崖っ縁で、背番号2の躍動が随所で光る。1点を追う5回は、先頭打者で右中間への二塁打を放った。その後、三塁走者として糸原の左飛でスタートを切るとヘッドスライディングで生還。6回も三塁走者として代打・マルテの中飛に頭から滑り込んで得点を奪った。

 その一球に投手の生活がかかっているんだ――。ミットに、防具に、そして全身に刻まれるのは“師匠”からの“伝言”だ。現役引退を決断したオリックス・能見とは入団1年目からバッテリーを組む幸運に恵まれた。「サインに首を振られることもあったけど時に厳しく、いろんな話をしてもらったので」。

 16年からは志願して1月の合同自主トレに参加し、毎日、テーブルを囲んでベテランの話に耳を傾けた。「ワンバンを止めたり、盗塁を刺すことが投手にとってどれだけありがたいか」「配球に正解はないけど抑えられる確率は上がる」。経験に裏打ちされた生々しい言葉が「捕手・梅野」の進化を促した。「お前の出すサイン一つ一つに意図がないとあかん。投手の生活がかかってるんだぞ」。バッテリーを組む投手のほとんどが経験の浅い若手となった今、その言葉がより生きる。

 この夜も一球、一球に魂と意図を込めて伊藤将ら6投手にサインを送った。湯浅をリードした8回2死一、三塁では引っかけた直球がワンバウンド。そらせば同点の場面だったが素早いハンドリングで捕球して阻止した。

 「1点差をモノにする緊迫感は捕手としてうれしい。バッテリーとしても最後は引き渡さなかったのが勝因。そこは良かった」

 能見の教えのごとく、止めて、導いて、つかんだ1勝は女房役としての快感と充実がにじんだ。(遠藤 礼)

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2022年9月15日のニュース