ツインズ・マエケン＆レッズ・秋山“88年世代”新春対談「関係性は…友達以上、恋人未満やな」

ポーズを決める前田健太（左）と秋山翔吾（撮影・小海途　良幹）
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　ツインズの前田健太投手（32）とレッズの秋山翔吾外野手（32）の新春対談が実現した。同じ1988年生まれで、日本時代から親交が深く、コロナ禍の昨季開幕前にはロサンゼルスでの合同自主トレで互いに支え合った。今やアスリートの発信ツールとして欠かせないSNSとの向き合い方や、今季の初対決に向けてなど話は多岐にわたった。（取材構成・柳原　直之）

　日本では巨人・坂本、中日・大野雄、メジャーでは田中（ヤンキースからFA）ら、球界の一大勢力ともいえる「88年世代」。前田と秋山も世代の中心を走り続けている。「ケンタ」「アキ」と呼び合う2人。仲を深めたきっかけは水風呂！？

　前田　2人の関係性は…友達以上、恋人未満やな。

　秋山　それを友達って言うんだよ。

　前田　ハハハ。初めて会ったのはオールスターかな。その時はしゃべってないよな？

　秋山　（15年の）東京ドームのオールスターで何人かで食事して、仲良くなったのはその年のプレミア12かな。ケンタはもうカープだけじゃなく日本のエースだった。凄く落ち着いていて、淡々と良いリズムで投げてくれていたし、頼もしかったという印象だね。

　前田　アキはプライベートは面白いし、気さくな感じ。野球の話になると、打者目線で細かく話ができる選手。88年生まれの仲間はみんなそうだけど、楽しくいられる感じ。

　秋山　実績のある人間が受け入れてくれないと、僕はそこに入りづらかった。人柄に助けられた。

　前田　そんなことないよ。

　秋山　とにかく水風呂でワーキャーされた思い出がある。

　前田　どこ？東京ドーム？台湾？

　秋山　（プレミア12の）台湾の時。すっげー、水風呂が冷たかった。西（阪神）とか則本（楽天）とかを連れて“風呂行くから、アキ行こう！”と言われて、連れていかれた時の3対1の構図ね。凍えるかと思ったよ。

　前田　それ全然、覚えてないわ。みんなでご飯に行くことが多かったよね。勇人（坂本）とか、雄大（大野）とか。一回、ご飯に行けば仲良くなれた。僕はそこからすぐに米国（メジャー）に行ったけど、オフに帰国した時にゴルフに行ったりするようになった。

　秋山　ケンタは声を掛けてくれるし、助けてくれるし、嫌なところがない。直してほしいところ？そんなのポンと出てこないくらい。

　前田　アキはひねくれているよね（笑い）。物事を少し違う考えで見るし、僕とは違う意見を持っている。そういう考えもあるんだなと思う。昨季の開幕前の合同トレーニングはしんどくて、お互いに気持ちが切れそうな時もあったけど、一緒に練習することによって競い合えた部分もあったね。初めて長い時間を一緒に過ごして、刺激し合えたのは良かった。　

　昨季はコロナ禍で60試合の短縮シーズンとなった。移籍1年目の前田は6勝1敗、防御率2.70と活躍し、ア・リーグのサイ・ヤング賞投票で2位に入った。メジャー1年目の秋山は開幕当初は苦しんだが、最後の1カ月（9月）は23試合で打率.317をマークした。

　秋山　ケンタはプレーオフの1戦目（の先発）を任されたことが凄い。それはチームの評価を得たということ。こんな特殊な状況下でも、自分の技術や体力をコントロールしながらやり続けられる。自分のやろうとしていることが間違いないと再認識させてくれる人間だった。

　前田　難しい状況だったけど、アキは最後の1カ月でアジャストした。守備も中堅から左翼に変わった中で最後に結果を残すのは素晴らしい。ダメだったところから考えて、最後に結果を残した。ある程度自分のやろうとしているところが形になったと思う。そういうところはさすが。

　秋山　今季は（打率）3割を打ちたい。打率.280でもいいとは思わない。納得できるのは3割を達成して、それが何年か続いてからだと思う。それはブレない方がいい。（メジャーのシーズンを）1回経験した分だけ、自分にも興味があるし、期待しているところもある。ケンタは（昨季は）サイ・ヤング投票2位だから、あと上に1つしかないね。

　前田　無理だって。無理だから、サイ・ヤング賞は（笑い）。

　秋山　30先発、200イニングくらい投げられるタフさはあると思う。

　前田　むちゃくちゃ大変やん。

　秋山　でも、それは期待しています。200イニングを投げる投手って日本でもどこでも少なくなってきている。（DH制の）アメリカン・リーグならなおさらチャンスがあると思う。

　前田　米国に行ってから（16年の）16勝が最高だから、それ以上勝てるようにしたい。（防御率は）昨季2点台だったけど、60試合制だからね。フル（162試合制）だった時に2点台だったら素晴らしい成績だと思うから、そこを目指していきたい。アキには3割を打ってほしいね。日本では打っていたし、米国でも！

　秋山　お互い200勝と2000安打という目標もある。年齢を重ねるにつれていろいろ障害が出てくると思うから、ケガをしないっていうのがお互いのテーマとしては楽なのかもしれないけどね。

　前田　今季はレッズ戦が4試合組まれているね。同学年の仲間と米国で対戦する機会があるのは凄くうれしい。もちろん抑えたい気持ちはあるし、打たれたくないけど、純粋にその時間を楽しめたらいい。なかなかあり得ないことだし、楽しみたいね。

　秋山　僕もケンタや田中と戦いたい思いがあってメジャーを目指したところもある。まずはそれがかなうような世の中であってほしい。たぶん打席に立ったらお互いこういう関係性なので、打った、打たないを次の対戦まで言い続ける可能性があるけど。

　前田　それは言うよ。ずっと言うよ。直球勝負？そんなことはしないです。

　秋山　直球勝負は逆にきついかもしれない。めちゃくちゃ身構えそうで。

　前田　じゃあ、やります（笑い）。

　秋山　こういうところから（戦いが）始まっている（笑い）。僕は立ち向かっていかないといけない立場。爪痕を残したい。

　前田はツイッター、インスタグラム、YouTubeを駆使してファンとの交流を深めている。一方の秋山はSNSのアカウントを開設していない。そこには互いの考えがある。

　前田　SNSはファンの人たちと交流するため、そして楽しんでもらうことが目的。英語で書くことで、米国や他の国の人も見てくれる。インスタグラムはそういう方々にも自分の存在を知ってもらうために米国に行ってから始めた。野球の話であれば子供たちとかアマチュアの方に少しでも良い情報を与えられたらいいなと思う。

　秋山　僕は今のところ投稿しないと思う。SNSを使うことに、いまだにちょっと抵抗があるというか…。誰のフィルターも通らないで自分の意見が出ることに不安がある。SNSは（フォロワーが）自分を肯定してくれる人が大半だから、間違った意見にも賛同する方々がいると思っている。ちょっと考え過ぎかもしれないけど、難しい…。

　前田　俺が（SNSに）あげてあげるよ。アキの近況報告を。

　秋山　そう、それくらいがいい。ケンタが言うように、自分は偏った変な見方をすることがあるので、“それ違うだろ”と言ってくれないと、何かの論争の時に語りだす可能性がある。インスタグラムは、載せるほどセンスの良い写真が撮れないね。あと、SNSをやり始めたら使命感が出そう。更新頻度とか考えちゃう…。

　前田　自分はそこまで深く考えていないかな。バッターは毎日試合があるし、（安打を）打った時と打っていない時ってことやろ？

　秋山　そうそう。だから、ケンタのYouTubeでお邪魔して、はしゃぐ。今はそれでいいと思っている。1カ月後に気が変わってやるかもしれないけどね（笑い）。

　【取材後記】2人は対談後にスポニチ特製の絵馬に今季の目標をしたためた。前田が「18勝」、秋山が「3割」と書き込み、その後、今年の干支（えと）の「丑（うし）」のイラストもお願いすると、独特なタッチで知られる「前田画伯」は躊躇（ちゅうちょ）なくペンを走らせた。「丑を描けばいいんでしょ。丑って顔も白黒やったっけ？こういうことやろ、丑って」とつぶやきながら、あっという間に完成させた。

　一方の秋山は「丑はNGなんですよ」と困り顔。すると、前田から「そんなヤツいねえだろ、“丑NG”って」と強烈な突っ込みが入った。しばらく悩んだ末に「絵は勘弁してください！」とギブアップ。意外な弱点発見か！？今回は実現しなかったが、いつか「マエケンチャンネル」で「秋山画伯」とのイラスト対決なんていかがでしょうか？（MLB担当・柳原　直之）

　◆前田　健太（まえだ・けんた）1988年（昭63）4月11日生まれ、大阪府出身の32歳。PL学園から06年高校生ドラフト1巡目指名で広島に入団。2年目から先発の一角として頭角を現し、沢村賞2度、最多勝2度、最優秀防御率3度、最多奪三振2度。15年オフにポスティングシステムを利用し、8年総額2500万ドル（約26億円）プラス出来高払いでドジャースに移籍。20年からツインズ。1メートル82、86キロ。右投げ右打ち。

　◆秋山　翔吾（あきやま・しょうご）1988年（昭63）4月16日生まれ、神奈川県出身の32歳。横浜創学館、八戸大を経て10年ドラフト3位で西武入団。15年にプロ野球新記録のシーズン216安打をマークするなど最多安打4度。17年は首位打者。ベストナイン4度、ゴールデングラブ賞6度受賞。19年オフに海外FA権を行使し3年総額2100万ドル（約21億8400万円）でレッズに移籍。1メートル84、85キロ。右投げ左打ち。