【新春対談 新井氏―広島・誠也(2)】人知れず黒田氏に相談「大事な何かを失ったような…」

[ 2021年1月2日 10:30 ]

<広島正月用対談>にこやかに対談する鈴木誠(左)と新井貴浩氏(撮影・北條 貴史)
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 新井 昨季は終盤、4番から3番に変わった。3番の方がいいという話も聞いたけど、そこは実際どう?

 誠也 もともと4番のタイプじゃないと思っていますからね。走ることを含め、僕はいろんなことをしないといけない。まだ走れますし、できるうちは3番に入ってかき回す。それが自分の野球スタイルじゃないか…と。大事な場面で本塁打を狙って打てる打者ではないので、自分ではそんなイメージです。

 新井 4番が嫌なわけではなく、3番の方が居心地いいんだ。

 誠也 4番はチームの顔だし、やりがいもあります。それはそれでいいんですけど、自分のスタイルに合うのは3番の方が…。

 新井 目指す選手の理想像と、自分のタイプ的なものが一致するのが3番で、4番よりもしっくり来る?

 誠也 そうですね。初回から打席が回ってくるので、しっかり後ろにつなぐ。4番も同じなんですが、自分で決めようという意識が強くなり過ぎる時があるので、3番の方が性格的にもタイプ的にも合っているんじゃないか…と思います。

 新井 誠也は確かにタイプで言うと3番だろうね。しっかりした打者が4番にいれば…だけど、(新外国人のケビン・)クロンはいいと思う。映像は見た?

 誠也 いや、すごいと思いますよ。

 新井 多分打つで。

 誠也 ああいう選手が入ってくれると、気持ち的に楽ですね。

 新井 楽だよな。誠也が3番で、4番にクロンが入ってもいい。右打者が並んでも関係ない。ただ、そうなったら松ちゃん(松山)の出番が無くなる。

 誠也 代打で(笑)。

 新井 (大笑)。

 誠也 (真面目に)勝負強いですから。

 新井 夏場以降は勝負強さを発揮し、その気になっていた。

 誠也 (うなずく)。

 新井 誠也は2年前の正月対談で“今はチームが強いけど、いずれ下降線を描く時が来る。その時にどうするか…が大事になる”と話していた。その意味で昨季はどうだった?

 誠也 やっぱり、来たな…と。チーム成績と同じで、僕自身もどこかで波が来る…と覚悟はしていました。個人成績は自己責任なので、夏場あたりからは毎打席いろんなことを試したり。でも、しっくりこず結果的にチームに迷惑かけて…。

 新井 なるほど。

 誠也 チーム内も勝ちたいと思っている選手と、ボンヤリしている選手に分かれている感じがして、そのジレンマ、歯がゆさにどうしたらいいのか、いろいろ考えました。“もういいや”と思った時期もあって、大事な何かを失ったような…。その時、黒田(博樹)さんに相談を…。

 新井 黒田さんからメールが届いたんでしょ?誠也にメールを送ったって聞いたよ。

 誠也 そうです。新井さんにも相談しようか…と思っていて。

 新井 (テレビ)画面で見る姿に“相当参っているな”とは感じたけど、(求められるまでは)何も言うまいと思って見ていた。

 誠也 “新井さんとどうコミュニケーションを取っていたんですか?”と、黒田さんに尋ねました。投手と野手の立場で。話を聞いたことがあったので。

 新井 うん。

 誠也 (大瀬良)大地さんと話し合った方がいいのか考えたり。そうしたらケガで登録抹消になって。アツさん(会沢)にはちょこちょこ話していたんですが、昨季は(故障がちで試合に)出たり出なかったりで離脱も1回あった。堂林さんも久々に(試合に)ずっと出ていたので、負担をそこまでかけたくないと思って…。

 新井 誠也は抱え込んでしまうから、相談できる相手が少なかったというのが…ね。

 誠也 見なくてもいい部分まで見てしまったというか、周りを見過ぎたというか…。自分以外のことに気を取られ、イライラした部分があって、それを自分でうまく消化できなかった感じです。

 新井 アツに対して気を使うもんな。久しぶりに試合に出ていた堂林にも、余計なことを言って負担をかけたくないと思う気持ちはよく分かるよ。

 誠也 堂林さんとは自主トレを一緒にやって、そういう話もしたので野球観を共有できていたと思うんです。同じ気持ちで試合に出ていたと思うし、本音ではいろいろ相談したいな…と。でも、それよりも僕は個人的に堂林さんに頑張ってもらいたかったので。

 新井 堂林は、本当に良かったな。

 誠也 ほんと、うれしかったです。

 新井 一緒に自主トレした時、いろいろ助言したんだよな。堂林が言っていた。

 誠也 まず(スイングの)“どこを直したくないですか?”と確認したんです。そうしたら“(背番号が投手から見えるぐらい左の)肩を入れないと振れないし、ボールの見え方もおかしくなる”と言われて。試してもらったら、確かに肩を入れた方がいいスイングだったし、下半身の連動も軸足に(体重が)しっかり乗って良かったんですね。

 新井 うんうん。

 誠也 僕はセンター返しが基本だと思っていますし、打ちたい方向に肩を向けてバットを振りにいく。“肩がセカンドぐらいまで向くのなら、堂林さんはそこがセンターだと思って入れば、バットがスムーズに振れるんじゃないですか”っていう話をしました。

 新井 打撃はね、難しい。教えてくださいと言われても、あまり言いたくない。その選手の打撃をキャンプから見ているなら、少なくとも体の中には入っていける。でも、自分なりの感覚を伝えても全く別な場合がある。これが一番難しい。そういう感じでしょ?

 誠也 人それぞれ感覚も、体の使い方も違いますしね。何でもハイハイと聞くより、話し合いながら取り組むのがベストなんじゃないかと思います。

 新井 あーしろ、こーしろじゃなく、“そこは迷わなくていいと思いますよ”とかね。

 誠也 そうですね。

 新井 野球は投手主導。投手が動かないと始まらないので、投手はフォームの再現性が大事だと思う。でも野手は受け身。崩された中でいかに拾えるか。誠也も100%のイメージでスイングしたなんて、年間で数えるほどしかないだろ?

 誠也 真っすぐが来ると分かっていても、基本は半信半疑。もしかしたら…という思いがどこかにあります。(1月3日に続く)

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