【黒田氏&新井対談】黒田氏「出来過ぎの野球人生」新井「日本一になりたい。それだけ」

[ 2017年1月3日 09:00 ]

昨季投打の精神的支柱として広島を優勝に導いた黒田氏(左)と新井
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 広島の「レジェンド」2人による新春対談が実現した。昨季、25年ぶりのリーグ優勝に貢献し、現役生活に別れを告げた黒田博樹氏(41)と、セ・リーグMVPに輝いた新井貴浩内野手(39)。リーグ連覇に向け、黒田氏は若鯉たちにカープの伝統を託し、新井は4番の座を奪い取れとあえて世代交代を期待した。2人の共通の思いである黄金時代到来へ、熱く語り合った。 (取材・構成=江尾 卓也)

 ――明けましておめでとうございます。昨季はどんな一年でしたか?

 黒田 今まで優勝したことがなかったので、最後の最後に経験させてもらい、出来過ぎの野球人生だったと思いますね。

 新井 本当に最高の一年でしたよね。黒田さんに関して言うと(メジャーから)帰ってくること自体がドラマでもあり得ないけど終わり方もあり得ない。うらやましいですよ。

 黒田 新井の引き際が楽しみやな(笑い)。

 新井 黒田さん以上のユニホームの脱ぎ方はないですよ。

 黒田 でも、超える可能性はあるからな。

 新井 どうやったら超えるんですか?

 黒田 日本シリーズの決勝ホームラン。それが最後の打席になる可能性はある。

 新井 それは、絶対にないです!(笑い)

 黒田 ま、個人的な意見やけど、自分がそうだったので、新井も真剣勝負で終わってほしいと思う。

 ――今季は連覇が懸かる。どんな戦いをしていくべき?

 新井 昨年と一緒。目の前の一戦一戦に120%で臨むこと。優勝したからと変な余裕を持ったりすると、つけ込まれてやられる。他球団は打倒カープで向かってくるので、昨年より道は険しくなるし、昨年以上に勝ちたい気持ちで臨まないと厳しい。

 黒田 ただ優勝した経験は必ずプラスになる。みんなが昨年以上の成績を残す気持ちで臨むことが大事だね。

 新井 黒田さんの穴は1人では埋められない。野手を含めたチーム全体で、みんなが少しずつ穴を埋める意識でやらないと。黒田さんと2年間一緒にやったわけですから、教えや姿勢を忘れないでほしいですね。

 黒田 (メジャーから戻ってきて)2年間、一緒にやってきた中で何かを感じ、いい伝統として次の世代に受け継いでいってくれれば、それが一番うれしい。若い野手の中には新井の背中を見て変わった選手もたくさんいた。40歳近くになってMVPを獲る選手を間近で見られたことは、彼らには財産だと思う。

 新井 自分はどんな時でも一生懸命にやる姿を見せないといけない。そういう使命感はありました。黒田さんにしても、後輩たちからすると復帰1年目は“どんな人なんだろう”と見ていたと思うんです。2年目はそれが、いい意味で慣れてきた。祐輔(野村)にしてもザキ(中崎)にしても、黒田さんから何かを学ぼうとしている。

 ――なかなか殻を破れない中堅選手もいる。

 黒田 新井も一度下降線をたどり、そこからはい上がってきたのに、目の前で見て何も感じないのか…ということ。歯がゆいですね。30歳を過ぎたらベテラン扱いされる風潮があるけど、僕は32歳で新しい環境(メジャー)に挑戦した。まだまだひと花、ふた花咲かしてほしい。

 ――黒田投手は今年はどうやってカープの試合を見ますか?

 黒田 向こう(米国)でもテレビで見ることはできますよ。もしかしたら、(マツダスタジアム右翼の)パフォーマンスシートで応援するかもしれないしね(笑い)。

 新井 砂かぶり席で、サングラスかけていたりして。ネクスト(バッターズサークル)で見かけたら怖い(爆笑)。

 黒田 でも、そうした時にどう感じるかは楽しみ。米国にいる時にバスケットボールやアメフットを観戦し、観客席から選手を見た時、涙が出るぐらい感動した。それがモチベーションにもなっていた。グラウンドに立つことがなくなり、スタンドから見た時にどう思うのか。凄く興味がある。

 ――今年は何を?

 新井 カープの臨時コーチです(笑い)。

 黒田 いやいや、(グラウンドキーパーの)菊地(敏郎)さんに聞いてマウンド整備を。

 新井 それ、面白いですね。5回のグラウンド整備の時に紛れて。

 黒田 誰も気づかんやろ。

 新井 普通にやったら気づきますよ。ファンも喜びますよ。だからカツラかぶって(笑い)。

 黒田 それか、ライトでいきなりトランペットを吹くとか。オフの間にめっちゃ練習して(笑い)。ユニホームを脱いだ寂しさとかは、今は全然ないね。普段のオフと変わらないので。ただ、朝起きて痛みを感じ、アッと思った時に、辞めたんだと実感する。

 新井 安心感?

 黒田 そう。今までだと、朝起きて肩が痛い、足が痛いとなると、ブルーになったけど今は右手をやけどしようが何しようが関係ない。

 ――将来また、カープにという気持ちは?

 黒田 まずは球団が決めることですから。自分がやりたいと言って、できるものじゃない。もう一回ユニホームを着て、勝負の世界に戻りたいと思うかどうかは、全然分からないですね。その時のタイミング。魅力を感じなければ、やらないかもしれないし。

 ――新井選手の目標は?

 新井 やっぱり優勝ですね。昨年あんなに喜んでもらい、優勝はいいもんだなと初めて経験したのでセ・リーグをもう一回制し、日本一になれたら最高。3割100打点とか、そういう思いは全然ない。日本一になりたい。それだけ。自分が試合に出られなくてもいい。半分は出たいけど自分が出られないということは、若手が育っているということ。5年後を考えたら、自分が4番を打っているようじゃ…と、半分は思いますから。

 黒田 新井には頑張ってほしいね。

 新井 自分は不器用なので、今まで通り一生懸命プレーするだけ。キク(菊池)や丸、広輔(田中)の年代、投手なら祐輔、猛(今村)、大地(大瀬良)らは、自分たちで強いカープをつくる意識を持ってほしいと思います。

 黒田 チーム共々、応援しているよ。

 ▽黒田氏と新井の盟友関係 黒田氏は96年ドラフト2位(逆指名)、新井は98年の同6位で広島に入団。2歳違いの2人はエースと主砲としてチームをけん引した。07年オフ、黒田は「違う野球をしてみたい気持ちがある」とFA宣言してドジャース移籍。新井も涙のFA宣言で阪神に移籍と、時を同じくしてチームを離れた。そしてともに15年に広島復帰。黒田はメジャー球団の20億円超のオファーを蹴ってカープ愛を貫き、阪神を退団した新井も年俸が10分の1となる2000万円で契約した。昨季は黒田が日米通算200勝、新井が2000安打を達成。チームの25年ぶりのリーグ優勝に貢献した。

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