春の肉体改造で気をつけるべき“落とし穴”とは?トップアスリートを指導するプロに聞いた

[ 2024年4月30日 09:00 ]

新年度と共にトレーニングでもスタートダッシュを切りたいという方も多いのではないでしょうか? しかし、生活環境が大きく変化する春先のトレーニングには、意外な落とし穴があるといいます。コンディショニングの第一人者で、100人以上のトップアスリートのサポートにも携わってきた桑原弘樹さんにポイントを聞きました。

春のトレーニングは「助走期間」と考え、50~80%の負荷に抑えよう

――早速ですが、春先のトレーニングについて、コンディショニングのプロとして普段どんなアドバイスをされているのか教えてください。

春は新たな気持ちでトレーニングに励みたい季節ですが、気温の変化に身体がついていけなかったり、花粉症に悩まされたり、新年度の開始で人事異動など環境の変化にストレスを感じたりと、実はトレーニングに集中するのは難しい時期です。

トレーニングとは、体に負荷を与え、それを乗り越えていくことです。花粉症などで体調が悪いときに負荷を掛けても成果は上がらず、ストレスになります。また、せっかくトレーニングメニューを組んでも、スケジュール調整に失敗し思ったようにメニューを消化できなくても心理的なストレスになります。

ですので、3〜4月はトレーニングの助走期間と捉え、ゴールデンウィーク明けから本格的に始動するのがオススメです。トレーニングメニューも、通常の50%程度の強度から始めて徐々に80%まで持っていきましょう。

――通常の50%から80%の強度とのことですが、具体的にはどんなことを意識すれば良いでしょうか?

たとえば、ウエイトトレーニングだったら、余裕を持って上げられる程度のウエイトを使い、時間は通常通り行うことを私は勧めています。たとえば、「ベンチプレス100㎏あげるぞ!」などの意気込みは大事ですが、重いものを上げること自体が目的になりやすいんです。すると、フォームが崩れてしまいます。

筋肉に適切に刺激を与えることこそが一番大事な目的ですが、トップアスリートでも重量や回数などの目標に気を取られて、フォームを崩して最悪ケガをしてしまうケースが少なくありません。

軽いウエイトだと、筋肉への刺激は弱くなりますが、フォームは意識しやすいというメリットがあります。春にフォームをしっかり固めることができれば、基礎となって長く使えます。

コンディショニングのプロの食事術

――トレーニング効果を高めるには食事も重要です。桑原さんは、どんなことを意識していますか?

実際に私がアスリートの方にもお伝えしている食事の考え方は次の通りです。完璧に食事から栄養を摂るのは難しいので、ザックリと考え方だけ覚えてください。

まず、朝食はしっかり食べましょう。炭水化物(糖質)とたんぱく質をバランス良く摂ることで、1日を元気にスタートさせられますよ。プロテインを取り入れるのも朝が良いと思います。忙しい朝、肉や魚を焼いて食べるのは大変なので、たんぱく質補給にプロテインを活用するのは合理的です。

一方、昼食は、あえて栄養素はこだわらない方が上手くいきます。栄養素にこだわろうとしても、短い昼休み時間や外回り中では制約が大きいですから。強いて言えば、食べすぎないことと、脂質を控えめにするのがポイントですね。洋定食と和定食があったら和を選ぶくらいで大丈夫ですよ。

夜は、昼に控えた分の脂質とたんぱく質をぜいたくに摂るのが良いでしょう。コンテストなど大きな目的があれば別ですが、食事の喜びを我慢し続けるのは苦痛ですし、ストレスにもなります。可能であれば、糖質は抑えてください。糖質はすぐに使うエネルギー源ですから、活動しない夜には不要です。

食事だけで摂れない栄養をサプリで補えばトレーニング効率も上がる

――桑原さんは、食事にサプリを組み合わせているそうですが、どんなサプリをどのように組み合わせているのでしょうか?

マルチビタミンやマルチミネラルを適宜補給する以外に、意識的に摂っていて、私自身、慢性的な疲労の改善、トレーニング効率アップなどの効果を体感しているサプリが「還元型コエンザイムQ10」です。ドラッグストアやコンビニでもよく販売されているので、ご存じの方が多いのではないでしょうか。

――なぜ、「還元型コエンザイムQ10」が良いのでしょうか?

化学の授業に出てくるATPという単語を覚えていますか? わかりやすく言えば、生物のエネルギーの源のような物質です。このATPを適切に作れなくなると、トレーニングどころではなくなります。細胞の中にあるミトコンドリアというATPを生み出すエネルギー工場のような器官があるのですが、ATPを作る際に、コエンザイムQ10が必要なのです。

このコエンザイムQ10、体内でも合成できるのですが、歳を重ねるほどに合成能力が落ちていきます。また、トレーニングで身体に負荷を掛ければ、そのぶん消費量が増えます。ストレスの大きい春先は、積極的に補給する必要があるといえます。

しかし、コエンザイムQ10を食事のみから摂るのは困難です。1日の目安量100mgを摂ろうと思ったら、特に豊富なイワシでも20匹分に相当します。だからこそサプリを賢く取り入れるのが合理的なのです。

ちなみに、コエンザイムQ10には「酸化型」と「還元型」の2種類がありますが、体内で吸収されやすい還元型コエンザイムQ10の補給をすすめます。

――このほか、春先のトレーニングで意識すべきことがあれば教えてください。

くれぐれも身体に負担をかけすぎないことです。変化が大きい時期ですから、ご自身の環境にあったトレーニングや食事の習慣作りに徹することが長い目で見たときに大切だと思います。

回答者プロフィール

桑原弘樹(くわばら・ひろき)

「桑原塾」主宰。コンディショニングのプロとして、100名以上のトップアスリートやモデルをサポート。大手食品メーカーなどでサプリメント開発に携わった経験を活かし、サプリを効果的に取り入れた独自のコンディショニング指導やボディメイク指導も行う。

<Edit:編集部>

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