稀勢休場「力入らない」左上腕万全遠く 休まない“鉄人”苦渋

[ 2017年5月25日 05:30 ]

大相撲夏場所11日目 ( 2017年5月24日    両国国技館 )

稀勢の里の休場により玉鷲の不戦勝が館内に告げられる
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 横綱・稀勢の里が休場した。3月の春場所で痛めた左上腕付近の状態が思わしくなく、横綱本人が師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)に申し入れ、「左大胸筋損傷、左上腕二頭筋損傷で約1カ月の通院加療を要する」との診断書を日本相撲協会に提出した。稀勢の里の弟弟子の関脇・高安は平幕・栃煌山を破って9勝目を挙げ、大関昇進の目安となる三役3場所33勝にあと1勝となった。横綱・日馬富士が小結・御嶽海に敗れて初黒星を喫し、11連勝の横綱・白鵬が単独トップに立った。

 ケガをしても土俵に上がり続けてきた稀勢の里だったが、ついに休場を決断した。田子ノ浦親方によると、左腕を全く使えずに関脇・琴奨菊に敗れた10日目の取組後に横綱から「中日くらいから力が入らない。休場させてほしい」と申し出たという。この日朝に再び話し合って正式に休場が決まった。

 夏場所の番付発表後は急ピッチな調整で出場を決めた。これまでの休場は大関時代の14年初場所千秋楽の1日だけ。“出ることも横綱の務め”と考えてきたが、6勝2敗で折り返した9日目から連敗した。横綱自身は「悪化したとかではない」と話しているというが、場所前の5日間の関取との稽古だけでは15日間を戦える体には戻らなかった。

 今後は治療を続けて名古屋場所(7月9日初日、愛知県体育館)での復帰を目指す。6月は巡業がないが、横綱力士碑刻名式(6月9日、東京・富岡八幡宮)などのイベントが控える。田子ノ浦親方は「本人と話しながら決めたい」としているものの、6月4日の茨城・鹿島神宮での奉納土俵入りなどに参加するかどうかは流動的だ。

 八角理事長は「(横綱での休場は)初めての経験。これからは勝たなければというプレッシャーが出てくる」と話した。新横綱優勝を飾った稀勢の里だが、負傷という目に見えない敵に綱の重みを痛感させられることになった。

 ▼横浜整形外科医会松宮是哲副会長 稀勢の里関は筋力が元に戻っていなかったと思う。筋損傷を発症してから1カ月のリハビリで完治しても、一般人であれば日常生活は困らないが、トップアスリートはそこから筋トレ、ストレッチをしないと元の筋力に戻らない。力が入らなかったのは最初から筋肉が落ちたままだったからだと思う。ここからトレーニングを行えば7月の名古屋場所は期待できると思う。

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2017年5月25日のニュース