山口 69大会ぶり全国1勝にOBも歓喜 史上最長ブランク

[ 2016年12月29日 05:30 ]

第96回全国高校ラグビー第2日   山口24―15富山第一 ( 2016年12月28日    東大阪市・花園ラグビー場 )

<山口・富山第一>前半、力強い突破を見せる山口・白石(中央)
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 1回戦の残り試合が行われ、64大会ぶり出場の山口(山口)は富山第一(富山)に24―15で勝ち、2回戦へ進んだ。大会最小兵のSH鹿取温希(3年)が活躍。1947年度第27回大会以来、69大会ぶり勝利は大会史上最長ブランク勝利になり、応援に駆けつけたOBも喜んだ。社会人や高校で日本一を経験した岡谷工(長野)の勝野大監督(42)、松山聖陵(愛媛)の渡辺悠太監督(28)は指導者として花園初勝利を挙げた。

 ラックからの素早いボール出しとスピードあふれるパスワーク。15人が一体となった展開ラグビーで山口が69大会ぶりの白星を手にした。

 「こんな舞台はなかなかない。多くのOBがいらしてくれた。花園で勝利を挙げられて大変うれしい」

 同校OBでもある中江洋平監督は喜びをかみしめた。

 県内屈指の進学校。3年生の選手の多くがセンター試験を控え、医学部を目指す者もいる。練習は週6日、きっちり2時間。部員は早朝や練習後に勉学に励んでいる。ラグビー部の創部は1930年。今回が4度目の出場で近年は低迷が続き、部員不足に悩まされた。「経験不問、男子なら誰でもOK」と間口を広げ、新入生の勧誘に力を入れると、部員が増加。今年は19人の1年生が門を叩き、現在の部員数は44人までになった。

 柔道部員だったLO佐藤は試合での骨折を機に、PR小林とともにラグビーに転向した。司令塔の鹿取は「今日はラグビーをやっててよかったと思う」と感無量の表情。その鹿取の志望校は「2年の時に担任教師に勧められた京都大工学部」。目下のところ合否は五分五分の判定だというが、1日練習2時間で花園出場、5時間勉強で京大現役合格の“両手に花”を目指す。

 突出した選手はいないが、全員で走り抜く。どこからでも攻撃の起点をつくれるのが強みで、安定したセットプレーも持ち味の一つだ。藤井主将は「個性があり、同じプレーをする選手が1人もいない。東福岡と対戦したい」と目を輝かせた。憧れの地で旋風の予感が漂っている。

 ≪レジェンドOBも歓喜≫ ジャージーと同じ黒と黄色に染まったバックスタンド。前回出場時の第32回大会(西宮球技場)でSOとして活躍した小山俊次さん(82)は現役部員の奮闘に笑顔でうなずいた。

 「僕の時は(得点が)0点で、こてんぱんにやられましたから。本当にうれしいです」

 小山さんの出場時は1回戦で日大二に0―33で零敗しただけに、喜びもひとしおだった。中江洋平監督の父・武人さん(86)も観戦。武人さんは第27回大会(西宮球技場)に山口中のCTBとして出場。1回戦・一宮中戦は13―0で勝利を収め、初の全国1勝を挙げた部の“レジェンド”だ。

 09年には部員が7人まで落ち込んだ山高ラグビー部。その当時のメンバーでもある徳永有希さん(23=京大大学院)は「本当に頼もしい。ラグビー部は文武両道のかがみです」と喜んだ。

 ▽山口高 主なOB 岸信介、佐藤栄作(元首相)、安倍晋太郎(元外相)、国木田独歩(作家)、中原中也(詩人)、重松清(作家)

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