松山英樹 完成まで2年かけた“理想のボール” 最もこだわったのは「パットの音」

[ 2016年12月29日 08:00 ]

ボールの巨大模型を手にする男子ゴルフの松山英樹(左)とダンロップスポーツの木滑和生社長
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 【福永稔彦のアンプレアブル】男子ゴルフの松山英樹(24=LEXUS)が12月12日、都内で開催されたダンロップスポーツの会見に出席した。お披露目されたのは来年2月発売の2種類のボールだった。

 松山はそのうちの1つ「ZスターXV」の開発に深く関わった。飛距離、スピン、打感などゴルファーがボールに求める要素はさまざま。松山も妥協しなかった。ダンロップはその要求に1つ1つ丁寧に応えた。

 完成まで約2年かかった。自身が「僕のわがままばかり聞いてもらったボール。相当な数をテストして今のボールにたどり着いた」と証言しており、まさに松山のためのボールと言える。

 アプローチでのスピン性能は「スピンがかかって思い通りに止まるようになった」と合格点が付いた。アイアンショットではスピン量を増やし、めくれ上がるような弾道が打てるよう要望したが「ピンをデッドに狙える」と満額回答。ドライバーショットに関しても「スピンが減りすぎるのが嫌。(1分間で)2500〜2700回転が理想。その間に収まってくれて、中高弾道で飛距離も出ている」と注文通りの性能になった。

 ただ実は松山が最もこだわったのは「音」だった。「パットの音にこだわった。そこをクリアするのに時間がかかった。(求めたのは)澄んだ音。良い言葉が見つからず伝えるのが難しい。分かっていればもう少し早く完成していたかもしれない」と松山は苦笑した。

 「音」の重要性について松山はこう解説する。「パットは特に音が影響する。皆さんもそうだと思うけど、耳をふさいで打とうとすると感覚がなくなる。だから音を大事にしてボールもクラブも選ぶ。プロになった時からこだわっている」。理想を追い求めるからこそ、なかなか首を縦に振らなかった。

 今年1月、ダンロップのボール開発担当者が60種類の試作品のボールを抱えて、米国を転戦中の松山のもとを訪れた。松山はホテルの自室でリフティングして、パターで打って「これ、良いかも」と理想に近い「音」のボールを見つけた。

 翌日にはコースでテスト。すると最初のラウンドでホールインワンが飛び出した。カップに直接飛び込むスーパーショットだった。「このボールで行けるんじゃないかな」と確信した松山は翌週のフェニックス・オープンで実戦投入。いきなり優勝してしまった。

 理想のボールを手にしてプレーにも良い影響があった。秋以降、課題だったパットが大きく改善したが、松山は「ボールが変わったことが大きい。9月以降、練習量を増やして入るようになった」と話した。それが出場5戦で4勝という快進撃につながった。

 「来年のマスターズはこのボールで優勝したい」と宣言した松山。開発に掛けた年月の重みと関係者の努力が自信の裏付けになっているような気がした。(専門委員)

 ◆福永 稔彦(ふくなが・としひこ)1965年、宮崎県生まれ。宮崎・日向高時代は野球部。立大卒。Jリーグが発足した92年から04年までサッカーを担当。一般スポーツデスクなどを経て、15年からゴルフ担当。ゴルフ歴は20年以上。1度だけ70台をマークしたことがある。

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