【高野進の目】飯塚から桐生へのパス 日本が目指した理想型

[ 2016年8月21日 08:57 ]

第2走者・飯塚(右)から第3走者・桐生(左)へのバトン
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リオデジャネイロ五輪陸上・男子400mリレー決勝

(8月19日)
 最高で2位、最悪4位と思っていたが、最高の結果になった。1走の山県が予想通りの走りで先行。飯塚へのバトンパスはギリギリだったが、うまくつないだ。200メートルが専門の飯塚はバックストレートで少し差を詰められたが、その分の遅れを桐生への完璧なバトンパスで取り戻した。

 01年から取り組んできたアンダーハンドパスは疾走速度を落とさないことが最大の目的だった。より疾走フォームに近い形でバトンをもらってすぐトップスピードに乗る。この2走から3走へのパスはまさに長年我々が目指してきたもので、メダル獲得への大きなポイントとなった。狙い通りに桐生は最初から一気に加速し、ケンブリッジもスタンディングからの加速で本来の力を発揮し、ラスト30メートルもよく粘った。

 日本は個人が駄目だからリレーに力を入れてきたと思うかもしれないが、全く逆だ。あくまでも個人の競技が第一。巧みなバトンパスでいくらロスを少なくしても、肝心の走りで簡単に抜かれたのでは勝負にならない。だからリレー専門の選手はつくらず、個々の走力アップに傾注してきた。山県も桐生も、もう走りのレベルは9秒台に入っている。長年磨き上げてきたバトンパスの技術に4人の走力が今回初めて追いつき、歴史的な銀メダルにつながった。(男子400メートル日本記録保持者、92年バルセロナ五輪8位、東海大体育学部教授)

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