鶴竜 2度変化に大ブーイングも2敗死守 悲願の綱初V王手

[ 2015年9月27日 05:30 ]

2度目の立ち合いでも変化した鶴竜(左)が稀勢の里をかわす

大相撲秋場所14日目

(9月26日 東京・両国国技館)
  横綱・鶴竜が立ち合いの変化から大関・稀勢の里を寄り倒し、2敗を守って単独首位に立った。前日に右膝を痛めた大関・照ノ富士は大関・豪栄道に寄り切られ、3敗に後退。3敗で追っていた稀勢の里と平幕の勢がともに敗れ、優勝争いは千秋楽結びの一番で直接対決する鶴竜と照ノ富士に絞られた。鶴竜が勝てば昨年春場所以来2度目で、横綱昇進後初の賜杯獲得。照ノ富士が勝てば優勝決定戦に持ち込まれる。
【14日目取組結果】

 「張り差しで中に入るのか」それとも「変化」でいくのか――。勝てば喉から手が出るほど欲しい横綱昇進後初の優勝へと大きく近づく稀勢の里戦を前に、鶴竜の胸には2つの作戦が去来していた。迎えた制限時間いっぱい。「やっぱり勝ちたい気持ちが出た」。たどり着いた結論は周囲からの批判は承知の「変化」の方だった。

 右に跳んだ最初の立ち合いは手つき不十分で行司が止めた。それでも「とにかく自分が取ろうと思った相撲に集中した。きょうは勝負に勝とうと思った」と続く2度目の立ち合いも左に変わった。いったん残されて相手得意の左差しで攻められたが、そこで師匠・井筒親方(元関脇・逆鉾)直伝の右の巻き替えに成功。もろ差しの体勢をつくると、最後は相手が強引に出てくるところを左に振って寄り倒した。

 一人横綱の信じられない奇襲。なりふり構わぬ横綱の2度の変化に対し、館内はブーイングの嵐だ。力勝負を期待した観客の容赦ない罵声が突き刺さる。それに対して取組後に鶴竜は「それでも勝負にいきました」と弁解しなかった。

 現役時に一度も変化をしなかった土俵下の藤島審判長(元大関・武双山)は「私は変化は汚い手段だと思っていた。自分が胸を張れないでしょ」と最高位の地位に就く者の見せた相撲に厳しい言葉。一方で「勝ちは勝ち。勝ったのは信念。2度跳ぶというのは逆に勇気がいる。信念勝ち」とも言った。鶴竜は横綱在位9場所目でいまだ優勝なし。白鵬、日馬富士が休場し、最大のライバル・照ノ富士も前日に負傷。「チャンスを逃したくない」。過去13勝28敗(直近3連敗中)と苦手の稀勢の里に対し、横綱のプライドより結果だけを追い求めた。

 千秋楽結び。1差で追う3敗の照ノ富士に勝てば、横綱昇進を決めた昨年春場所以来2度目の賜杯が手に入る。「全てを集中させていきたい」。この日の批判を払しょくするような真っ向勝負で締めくくることこそが、横綱としての義務となる。

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