稀勢 最大逆転Vだ!3差から…06年以来日本人賜杯へ1差に

[ 2015年9月26日 05:30 ]

照ノ富士(右)をより倒し、2敗に引きずり降ろした稀勢の里

大相撲秋場所13日目

(9月25日 東京・両国国技館)
 3敗の大関・稀勢の里(29=田子ノ浦部屋)が1敗で単独トップだった大関・照ノ富士(23=伊勢ケ浜部屋)を寄り倒し、10勝目を挙げた。星の差を1として悲願の初優勝へ望みをつないだ。大相撲史上初の“終盤での3差逆転”という奇跡へ向けて残り2日間に臨む。優勝争いは2敗の横綱・鶴竜(30=井筒部屋)と照ノ富士、1差で追う稀勢の里と平幕・勢(28=伊勢ノ海部屋)の4人に絞られた。
【13日目取組結果】

 先につかんだ得意の右上手をしっかりと握り、必死の形相で稀勢の里が土俵際まで寄り立てた。その瞬間。照ノ富士の右膝が俵に掛かってガクリと崩れた。それでも、奇跡の逆転優勝を諦めていない29歳の日本人大関は「攻めようと思いました」となりふり構わなかった。全ての力を振り絞って体重をかけ、最後は相手に覆いかぶさるように寄り倒し。大関同士の取組では珍しく館内に座布団が乱舞した。苦悶(くもん)の表情で寝そべる相手を気遣い、起き上がるまで土俵上で仁王立ち。そしてあくまでも淡々と今場所10回目の勝ち名乗りを受けた。

 6歳年下の後輩大関を2敗に引きずり降ろし、10日目終了時に3差に開いた白星はついに1差に。15日制が定着した1949年(昭24)夏場所以降、終盤戦での“3差逆転優勝”の例はない。数字上は自力Vはないが、照ノ富士が思わぬ負傷。14日目に2敗の鶴竜を倒せば機運は上昇する。そんな状況だが、引き揚げた支度部屋でも稀勢の里の無表情は変わらず「やれることをしっかりやった」と当たり前のように振り返った。

 これまでの大関22場所中14場所が東の正大関。その大関トップの座を今場所は照ノ富士に初めて奪われ「気分は良くない」と悔しさを持った。8月23日の札幌巡業の幕内トーナメントでは、その後輩大関を倒して総合優勝。本場所ではない花相撲だったが「彼もガチだから負けじといった」とどんな状況でも闘志をかき立てられる存在であることに間違いなかった。

 前日に3敗目を喫した11日目の朝。その時点で全勝の照ノ富士とは3差で、優勝は絶望的だと誰もが思った。だが、いつもと変わらず黙々と四股を踏み「こっからだと思います」と諦めなかった。過去3勝3敗と五分の照ノ富士戦の映像を何度も見返し「休まず攻めること」を念頭に掲げた。

 大相撲史に残る悲願の初優勝へ、06年初場所の栃東以来の日本出身力士Vへ、あと2日、優勝35回の白鵬、優勝6回の日馬富士がいない場所で奇跡は起こるのか――。「まあ、やることをやるだけ」。恒例のフレーズを言い残し、帰りの車に乗り込んだ。

 ≪10日目以降で3差逆転V過去0回≫  10日目以降、トップと2差あった力士が逆転優勝した例は過去17例ある。今年の夏場所で11日目に3敗だった照ノ富士が、1敗だった白鵬を逆転して初優勝を飾ったのが、最も最近のケースだ。ただし、10日目以降3差だった力士が逆転優勝した例は、過去に一度もない。今場所の稀勢の里は10日目までに3敗しており、無敗でトップを走っていた照ノ富士とは3差あった。これをひっくり返せば、史上最大の逆転劇となる。なお、12年夏場所では、5日目までに3敗した平幕の旭天鵬(現大島親方)がその後10連勝し、単独で全勝していた琴奨菊を逆転したケースがある。

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