錦織 左脚回復せず棄権…強くなったがゆえの試練 試合数激増

[ 2015年7月2日 05:30 ]

2回戦を前に練習に向かう錦織。この後、試合を棄権した

ウィンブルドン選手権第3日

(7月1日 英ロンドン・オールイングランド・クラブ)
 世界ランキング5位で第5シードの錦織圭(25=日清食品)がサンティアゴ・ヒラルド(27=コロンビア)との2回戦を棄権した。試合前の練習を約30分行ったが、2週前のゲリー・ウェバー・オープンで痛めた左ふくらはぎの状態は思わしくなく、センターコートに立つことなく決断した。95年の松岡修造以来20年ぶりの8強入りは来年以降にお預けとなった。日本のエースは8月からのハードコート・シーズンに備えて、回復に努める。

 センターコートに立つ前に決断した。錦織は大会会場で緊急会見を行い「朝から少し痛みがあった。練習で試合みたいに思い切り動いてみたときに痛みがあった。この試合はできても、勝てはしないと思ったのでやめた」と悔しそうな表情を浮かべ、言葉をつないだ。

 体は正直だった。3時間22分を戦った1回戦から一夜明けた6月30日の練習では、コートが1時間使用できる状況にもかかわらず、約30分で練習を切り上げた。フットワークなど激しい動きは一切なし。この日の試合前練習もアキレス腱から左ふくらはぎにかけてテーピングを施し、淡々とストローク、サーブ、ボレーを確認しただけで全力で走ることはできなかった。「2日間、様子を見たが、歩くのも走るのも痛みがあって、プレーできないと思った。試合ができないのは悔しい」と落胆を隠せなかった。

 トッププレーヤーへの試練だ。昨季のウィンブルドン選手権開幕前の成績は27勝8敗。それに対して、今季は36勝9敗と実力アップに比例して10試合も多くの試合を消化してきた。試合のレベルも上がり、ランクを上げるためにはタフな戦いを勝ち抜いていかなければならない。昨季は左股関節痛のため全仏オープンで初戦敗退。その反省を生かしてオフに体力を強化し、クレーシーズンを乗り越えたはずだった。しかし「毎年感じているが、クレーの4試合(大会)は凄くハード。(後半2大会の)ローマ国際(イタリア国際)、全仏くらいはメンタル的にも疲れてきている」と疲労を認めるしかなかった。

 芝での手応えを得ていただけに「とても残念。チャンスを逃してしまった」と漏らした。ウィンブルドン選手権では今回が2度目のセンターコートとなるはずだった。大会期間中しか使用されず、ごく一部の選手のみが踏むことができる聖地。前回10年は相手が世界1位のナダル(スペイン)だったから実現。今回は第5シードとして認められ、実力で勝ち取った大舞台だったが、錦織は「それどころではなかった。自分の体が優先」と大人の決断を選択した。

 4大大会で唯一8強入りのない“鬼門”ウィンブルドンでの戦いは終わった。今後は検査を行う方針だが、拠点の米国に戻るか、日本に帰国するかは未定。しかし、昨年準優勝した全米オープンへ切り替えなければならない。「久しぶりのハード(コート)なので、しっかり慣れること。テニス自体は良くなってきているので、まずはケガを治して、しっかり練習していけたらなと思う」。錦織の視線は全米での頂点に向けられた。

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