「縛られるのは合わない」川内がNTメンバー辞退の真意明かす

[ 2015年7月2日 19:33 ]

日本陸連のマラソン・ナショナルチーム辞退に至った経緯を明かした川内

 公務員ランナーが吠えた。日本陸連は2日、男女マラソンのナショナルチーム(NT)の今年度のメンバーを発表。既に辞退届けを提出していた男子の川内優輝(28=埼玉県庁)が、辞退に至った真意を明かした。

 川内はこの日、ゴールドコースト・マラソン(5日)に向け、成田空港で取材に応じた。同マラソンへの意気込みを語った後、NTに話題が移ると一気に言葉に熱が帯びた。「(NTに入る)メリットよりデメリットが大きい。私は自由にやってきたランナー。縛られてやっていくことは合わない」

 NTは昨年4月1日に発足。メンバーは科学的なサポートを受けられる一方で、夏場の合宿参加などが義務づけられる。昨年度もメンバーだった川内は今年度のメンバーは今年3月末には発表されると思っていたが、なかなか発表されず。本紙が4月22日付でNTの日程が決まらずに川内が困惑していることを報じると、翌日、日本陸連から川内にようやく連絡があったという。

 「スポーツ紙に載るまで連絡がなかった。それはさすがにひどい。4月から新年度なわけですから」。

 NTメンバーは当初、16年リオデジャネイロ五輪代表選考で優位性があったが、日本陸連は5月27日の理事会で優位性の撤廃を決定。川内は5月10日の仙台ハーフマラソンに出場したが、実はこのとき何人かの実業団ランナーからは優位性が撤廃されるかもしれないという情報を聞いていた。

 「実業団には連絡が回っていて、重要なことは私のところに連絡がこない」。昨秋のアジア大会銅メダルでNTメンバー入りの条件を満たしていた川内は、今年度もNTで活動するつもりだった。だが、不信感が積み重なり、日本陸連から送られてきた同意書にはサインせず、自ら辞退届けをパソコンで制作し、6月15日に日本陸連に送った。

 「何回も裏切られた。情報系統がしっかりしていない」。NTの目玉である科学的なサポートにも疑問を持っている。昨年度のメンバーには故障でマラソンも走れず、合宿にも参加できない選手がいた。「NTなのにケガは治らなかった。NTに頼っても治らない」。

 川内は16年リオデジャネイロ五輪を最後の五輪挑戦と位置づけている。NTを辞退したのは、過程も結果も全て自分で責任を取りたかったから。「マラソンは結果が全て。自分が思って決めたことをやって五輪に出られなければ仕方がない。最後くらい自分の意志でやっていこうと思って辞退した」。

 リオ選考会は12月の福岡国際を予定している。打倒NTを誓う公務員ランナーは、自分を曲げずに夢舞台を狙う。

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2015年7月2日のニュース