告別式から計量直行 沙保里 天国に誓った「優勝が父の喜び」

[ 2014年3月15日 05:30 ]

練習場に設けられた父・栄勝さんの祭壇の前で練習する吉田沙保里(左)

 吉田沙保里(31=ALSOK)が父とともに戦い抜く。女子国別対抗戦のW杯は15日に東京都板橋区の小豆沢体育館で開幕する。14日に三重県内で営まれた父・吉田栄勝(よしだ・えいかつ)さん(享年61)の告別式に参列した吉田は、出棺を見届けるとすぐに都内の味の素ナショナルトレーニングセンターで行われた計量に直行。メディカルチェックと計量をパスすると、練習を再開させ、チームへの貢献を誓った。

 父の出棺を見届けてからわずか5時間後、吉田はシングレット(レスリング用のウエア)を着てマットにいた。計量を終えた選手たちが引き揚げていく中、栄勝さんの遺影の前で居残り練習を始めた。酷にも思える状況だが、そこは生来のレスラー。この数日間、憔悴(しょうすい)しきっていた表情には少し生気が戻り、笑顔も浮かんだ。

 11日に栄勝さんがくも膜下出血で急逝し、この日は午後0時30分から告別式だった。吉田は弔問客へのあいさつで「お父さんは世界一です。今まで育ててくれてありがとう。大好きだよ」と天国の父に絶叫。2時17分に棺を見送 ると、すぐさま東京へ向かった。新幹線と在来線を乗り継ぎ、6時35分には味の素ナショナルトレセンに到着した。

 新階級の53キロ級で臨む今大会だが、団体戦は2キロオーバーまで許されるルール。これまでの55キロ級に比べて減量が必要となった吉田も54・1キロで無事に計量をパスした。08、12年と吉田の国際大会での連勝が止まったのはこの大会でもあり、栄和人監督は状態を考慮し、15日の予選リーグは1、2試合の出場にとどめる方針。「16日の決勝で優勝に貢献してもらいたい」と起用法を語った。

 計量を終えた吉田の元には各国チームの選手が次々に訪れ、失意に暮れる日本のエースを握手やハグで激励した。取材対応はないはずだったが、吉田は自ら報道陣の前に立って決意を語った。「W杯に行く途中で亡くなってしまったけど、父も日本チームのコーチとして一緒に戦ってくれると思う。優勝することがまた父の喜びになると思う」。レスリング一筋に生きた父の思いを胸に、弔いの優勝を誓った。

▽女子W杯 昨年の世界選手権の国別対抗得点上位8カ国による団体戦。初日は4チームごとのブロックに分かれ総当たりで順位を決める。最終日は各ブロックの同じ順位のチームが対戦して順位決定戦を行う。各試合は8階級の総当たり戦でメンバーは同階級の選手なら試合ごとに入れ替え可能となる。4勝4敗の場合は勝ち方や得点など内容で勝敗をつける。01年から始まり、日本は優勝6回、2位2回、3位5回と過去13大会全てで、表彰台に上がっている。モンゴルで行われた昨年は3位入賞。

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