帝京大V5 毎年選手入れ替わる学生スポーツで不滅の記録

[ 2014年1月13日 05:30 ]

<帝京大・早大>前半23分、トライを決める帝京大・深村(中央)

ラグビー全国大学選手権決勝 帝京大41―34早大

(1月12日 国立競技場)
 帝京大が早大を41―34で下し連続優勝記録を更新する史上初の5連覇で5度目の大学日本一を達成した。前半を12―10で折り返し、後半は開始から立て続けに3トライ。その後、早大の猛反撃に遭ったが、相手が強みとするセットプレーで互角以上の戦いを演じ、リードを守りきった。96年に就任した岩出雅之監督(53)の下、大学と一体となった強化態勢を築き上げ、現国立競技場では最後の大学選手権で不滅の大記録を打ち立てた。

 たくましく育て上げた選手に支えられ、岩出監督は5度、宙に舞った。夢心地の5秒間。「うれしいですね。学生たちがよく頑張ったと思います。最高です」。ありきたりの言葉にまじり気のない喜びがこもっていた。

 どんな状況でも動じなかった。開始25秒で先制トライを許した。それでも「ネガティブには考えなかった」と岩出監督。「五分以上に組めると思っていた」とスクラムで互角以上に戦った。5―7の前半23分に連続ラックでFWが押し込み、最後はプロップ深村がタックルを受けながら右手を伸ばして逆転トライ。後半もブレークダウンでFW陣が速いチャージ、2人目のサポートでターンオーバーを繰り返し、指揮官は勝因を「FWの頑張り」と指摘した。最大24点差が後半18分から10分間で3つのトライを奪われて5点差とされる場面もあったが、CTB中村主将が「“やっとこの状況が来たか”と。接戦で勝てるのが強み。この状況を楽しもうと。みんな笑っていました」と振り返る余裕があった。

 中村が入学したのは大学選手権を初制覇した直後の10年4月。その後、連覇を重ねたチームが最も変化した部分は「生活面の厳しさ」だ。起床から就寝まで時間厳守は当たり前、掃除ではより細かい部分まで徹底するようになった。「普段から面倒くさいことを我慢強くやることで、つまらない、きつい練習も粘り強くできるようになった。心は2日、3日じゃ強くならない」。心技体、3つ全てがかみ合った。

 1年ごとにメンバーが入れ替わる学生スポーツでの5連覇。大学と一体となった強化態勢も大きな土台となった。11年4月、学内に設立されたスポーツ医科学センターが栄養面、故障者の治療などを一元化して管理。選手は月1回血液検査を行い、足りない栄養素があれば、個別にそれを補う食事を取る。まさに他の大学の追随を許さない組織一体の強化態勢。同センター助教の本郷仁吾アスレティックトレーナー(34)も「選手のパフォーマンスも年々上がっている」と話した。

 次の戦いは日本選手権での社会人撃破。「これから準備して差を詰めるのは無理。だから1年かけて準備してきた」と岩出監督は言う。優れた高校生の勧誘と強化で激しくなるチーム内競争は最上級生だけに頼らない戦力構成にもつながり、この日も先発フィフティーンの4年生は4人だった。5連覇は社会人撃破、そして6連覇、7連覇へと続く道程にすぎない。

 ▽帝京大ラグビー部 70年創部。78年に関東大学対抗戦に加盟。83年に大学選手権初出場。96年に岩出雅之監督が就任し、強化が本格化したが、98年は部員の不祥事で公式戦出場を辞退。02年大学選手権で初のベスト4。08年対抗戦で初の1位。09年度に大学選手権初優勝から5連覇を達成した。大学選手権出場21回、優勝5回。日本選手権出場7回。チームカラーは赤。部員数152人。グラウンドは東京都日野市。

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