沙羅 「異次元」141メートル“レコード”V

[ 2013年8月5日 06:00 ]

札幌の街並みに向かって飛び出す、女子で優勝した高梨

ノルディックスキー大倉山サマージャンプ

(8月4日 札幌市大倉山=HS134メートル、K点120メートル)
 高梨沙羅(16=クラレ)が驚がくの141メートルで優勝を飾った。126・5メートルで2位にとどまった1回目から、2回目に自己最長記録タイとなる大ジャンプを見せて逆転。着地で手をついたために転倒扱いでジャンプ台記録とは認められなかったものの、次戦のグランプリ2連戦(14~15日、フランス)に大きく弾みをつけた。

 遠くに飛ぶことこそジャンパーの喜び。高梨にとってこれ以上幸せな時間はなかった。助走、踏み切り、空中へ。「空中で異次元のところを飛んでいった」。吹き上げる向かい風も全て浮力に変え、1メートル52の小さな体は軽々と空を飛び抜けた。

 「飛んでいく軌道がいつもと全く違う。これはどのくらいまでいくんだろう」。そんなことを考えながら、着地で手をつくほどにギリギリまで楽しんだ空中飛行。135メートルを示す白線を大きく越えて着地し、見つめた掲示板に表示された距離は141メートル。いつも冷静な高梨が、他の選手とハイタッチで喜んだ。

 前日の宮の森サマージャンプ大会では納得のいくジャンプができずに2位に終わった。「手応えは悪くないけどモヤモヤしている」。この日も試技と1回目は伊藤に後れをとった。「最後のジャンプだし、あまりモヤモヤしてても仕方ない。楽しく飛ぼう」。そんな開き直りと若干の修正が生きた。前日の試合後にはコーチの父・寛也さんと山田いずみコーチから、飛び出しでの体の突っ込みすぎを注意されていた。踏み切りの角度に気をつけ、ようやく2回目で修正が効いた。

 大倉山の女子最長記録は、高梨が11年HBC杯でマークした141メートル(男子は伊東大貴の146メートル)。この日は着地で手をついたために転倒扱いで、最長不倒距離としては認定されなかった。だが「久しぶりに出た納得のジャンプ。爽快にさせてくれるジャンプ」と喜ぶ高梨が気にする様子はなかった。最近はテレマーク姿勢や飛型点に悩んでばかりいたが、高梨の強みはまずは飛距離にある。ジャンプの楽しさもそこにあることを思い出したような爽快な笑顔だった。

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