豊響、涙の初金星!白鵬撃破に親方の目も赤く…

[ 2012年5月13日 06:00 ]

白鵬(右)を小手投げで下す豊響

大相撲夏場所7日目

(5月12日 両国国技館)
 涙、涙の初金星だ。平幕・豊響が横綱・白鵬を土俵際の小手投げで破り、横綱戦3度目の挑戦で初金星を挙げた。同じ境川部屋所属で切磋琢磨(せっさたくま)する豪栄道、妙義龍の大関撃破に発奮し、結びで大仕事。審判員として土俵下で見守った師匠の境川親方(元小結・両国)とともに目を真っ赤にさせた。全勝の琴奨菊に土がつき、白鵬は前半戦で早くも2敗目。1敗は稀勢の里、琴奨菊、鶴竜の3大関と平幕の栃煌山、宝富士の5人。
【取組結果】

 熱いものがこみ上げてくるのを抑えきれなかった。座布団が舞う中で勝ち名乗りを受けた豊響が東の控えに視線を送ると、師匠・境川親方が感極まっていた。「ここまで育ててもらった恩を感じた」。熱気で赤みを帯びていたほおを大粒の涙が伝わった。05年九州場所14日目、魁皇を下し7連覇を達成した朝青龍が下を向いて号泣したことがあるが、土俵上で涙を流すのは極めて異例。「相撲で勝って泣いたのは初めて。いつも師匠に“いいところ見せてくれ”と言われてた。それがやっとできたかな…」。花道を引き揚げる際も手で何度も顔を拭った。

 出番前には同じ境川部屋でかつて自身の付け人をしていた妙義龍と同期の豪栄道が大関を撃破した。今場所2大関を撃破して迎えた横綱戦。白鵬にもろ差しを許して一気に寄せられても、諦めなかった。土俵際、捨て身の右小手投げで横綱の体を完全に裏返した。軍配は東に上がったものの、すぐに物言い。師匠も加わった協議は行司差し違えとなり、今場所初めて満員となった館内が騒然となった。

 山口・響高では相撲に打ち込んでいたが、卒業後は造船所や運送会社などアルバイトをしていた。そんな時に誘いの手をさしのべたのが師匠だった。ぶちかまし一徹で「猛牛」があだなのこわもてだが、母の日に10数万円のマッサージチェアを贈るなど情に厚い。08年には網膜剥離で左目の手術を受けた苦労人の晴れ姿に「鬼の目に涙はないよ」とごまかす師匠の目も赤く染まった。

 2年前には野球賭博問題で処分を受けた。謹慎が明けた直後に行われた夏巡業。最初の巡業地での稽古で真っ先に白鵬から指名され、約10分間もしごかれた。途中で脳振とうになるなど手荒い「復帰祝い」だったが、豊響は「反省の気持ちを伝えるには稽古しかない。横綱の愛情を感じた」と恐縮していた。それから2年。涙の初金星には恩返しの意味もこめられていた。

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