稀勢の里 06年初場所以来の日本人Vに意欲

[ 2011年11月1日 06:00 ]

香椎神宮の御神木「綾杉」の前に立つ稀勢の里

 日本相撲協会は31日、九州場所(13日初日、福岡国際センター)の新番付を発表した。大関獲りの関脇・稀勢の里(25=鳴戸部屋)は福岡市内の鳴戸部屋宿舎で会見し、冷静な表情で決意表明。今場所日本人力士が優勝を逃せば東京・両国国技館の優勝額が全て外国出身力士で占められるだけに、師匠の鳴戸親方(元横綱・隆の里)から送られた3つのアドバイスを実践し、06年初場所以来の日本人Vを目指す。

 9年半の相撲人生で最も重要な場所を控えても、稀勢の里は全くぶれていなかった。報道陣からどんな質問が飛んでも具体的な目標は一切口にしない。「いつもと変わりない」「自分の相撲を一番一番頑張る。結果は後から付いてくる」「大関獲りの意識?何もない。いつも通りの稽古をするだけ」。新大関の琴奨菊が先場所の番付発表会見で「チャンスをものにしていきたい」など前向きな発言を行ったのとは対照的で、高ぶる感情を胸に封じ込め“抑制の美学”を貫いた。

 直近2場所で22勝をマーク。昇進の目安となる33勝には11勝以上が必要となるが、大関獲りに向け、師匠の鳴戸親方からは3つのアドバイスを授けられた。内容は(1)「平常心で臨むこと」(2)「自分の力を信じること」(3)「稀勢の里らしい相撲を取ること」。(1)(2)についてはかねがね指摘されてきた精神面の課題。これまで何度もブレークの予感を漂わせたが、気合ばかりが先行して安定した成績を残せなかった。(3)については師匠が「左からのおっつけと右の突き放しが稀勢の里の真骨頂」と説明した。先場所は白鵬を撃破するなど12勝を挙げ、千秋楽まで優勝争いを展開。周囲は大関の力はあると認めているだけに、この3点を実践すれば「結果が出る」と信じている。

 今場所も外国出身力士が優勝賜杯を手にすると、来年初場所から国技館に掲示されている32枚の優勝額から日本人力士が消えてしまう。「優勝?そういうのは意識しない。目の前の一番に集中したい」と控えめだが、国技の危機の中、中卒叩き上げのホープに懸かる期待は大きい。悲願の大関昇進、そして06年初場所の栃東以来の日本人優勝――。さまざまな期待を背負う25歳はあくまで冷静に場所に挑む。

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2011年11月1日のニュース