「相撲界は時代遅れ」剣道範士に“ダメ出し”された

[ 2011年5月31日 06:00 ]

剣道範士の井上義彦氏(中央)の講演を聞く放駒理事長(左)、白鵬(右)ら全協会員

 日本相撲協会は30日、東京・両国国技館で力士、親方ら全協会員(約1000人)を対象とした八百長問題の再発防止に関する研修会を開催。講師を務めた剣道範士の井上義彦・静岡県剣道連盟相談役顧問(83)が同じ武道の観点から八百長を戒めた。同氏は剣道界が勝利至上主義を撤廃したことを引き合いに出し、相撲界を時代遅れだと指摘。武道の本質から逸脱している相撲界の現状をばっさりと切り捨てた。

 八百長問題で揺れる相撲界が剣道界からダメ出しを食らった。再発防止策の一環として開催された研修会で、壇上に立ったのは剣道範士の井上氏。会に先立って放駒理事長(元大関・魁傑)は「ただ聞くのではなく、剣の道、武士道に着目して、今の自分を見つめ直し、力士として、人として、どうあるべきか今後の参考にしてほしい」と訴えたが、約1時間の講義は協会員にとっては耳の痛い話ばかりだった。

 井上氏は相撲界の人気低迷の要因として、外国出身力士が日本人気質を十分に理解していないことや、駆け引きが多用される立ち合いの乱れを挙げる一方、八百長問題にも言及。「勝ちたいからといって、真理、真実といった人の道から外れるような勝ち方は絶対に避けなければならない。正々堂々と勝つこと」と戒めた。

 井上氏によると、相撲と剣道はともに室町時代から武士の“必修科目”だったというが、約700年たった今、社会的信用は明暗が分かれた。剣道界は第2次大戦を機に廃止の危機にひんしていたが、75年に剣道理念を明文化。これまでの「結果重視」から「勝つまでの過程重視」に改め、小学生から指導者まで年代別による講習会を繰り返し、汚い勝ち方の防止に努めてきた。井上氏は勝敗優先に陥りがちな角界を憂い「相撲界は時代遅れになっている」と厳しく指摘した。

 熱心に耳を傾けた横綱・白鵬は「相撲も白黒はっきりしていて(剣道に)通じるものがある。本当に一人一人が(危機感を)認識して、やっていくことが大事」と前向きだが、武道として今、根本からの出直しを求められているのも確か。本場所正常開催への道は開けつつあっても、「クリーン大相撲」の再構築には相当時間がかかりそうだ。

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2011年5月31日のニュース