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被災地へ勇気届けた!富岡 震災で行方不明の友に贈る全国初勝利

[ 2014年1月1日 05:30 ]

<松山商・富岡>前半13分、富岡・高木がゴールを決めほえる

 被災地へ勇気を届けた。全国高校サッカー選手権は1回戦15試合が行われ、5年ぶり2回目の出場となった富岡(福島)は松山商(愛媛)を2―0で下し、初の初戦突破を果たした。FW内山翔太(3年)が前半3分に幸先よく先制し、流れをつかんだ。東日本大震災で甚大な被害を受けた同校は、避難生活を続けるなど困難を乗り越えて全国1勝をつかんだ。松商学園(長野)はMF中沢健太(3年)が大会初のハットトリックを決める活躍で4―3で西京(山口)を破った。

【試合結果 トーナメント表】

 仲間に勝利を届けた。前半3分、右FKにFW内山が頭で合わせて先制。その10分後にも、鮮やかなカウンターからのこぼれ球をFW高木が頭で押し込んで追加点を奪った。現在の3年生は入学直前の11年3月11日に東日本大震災で被災。チームメートになるはずの貝塚晃太さんは南相馬市で津波にのみ込まれ、現在も行方不明。先制点を挙げた内山は「このピッチを目指していた貝塚の分まで俺たちがやろうという気持ちだった」と振り返った。

 ゴールを挙げた内山、高木ら、ベンチ入りの多くが中学時代に貝塚さんと県選抜でプレー。今年3月2日には震災から2年の区切りとして貝塚さんの告別式も行われた。「サッカーがやりたくてもできなかった仲間がいる。仲間の分まで全力でサッカーをしようと決めた」とGK高瀬主将。県大会から全試合、貝塚さんの写真をベンチに置いて戦った。スタンドで見守った貝塚さんの母・由紀子さん(49)は「晃太はここが目標だった。一緒に戦っていると思う」としみじみ話した。

 3年生は福島第1原発から10キロ圏内に位置する校舎には一度も通えず、現在も福島市の福島北高の敷地内に建てられた仮設校舎に通う。練習は主に仮設校舎から車で10分の十六沼公園サッカー場で行うが、避難直後は校舎脇の駐車場や近所の空き地で練習を重ねた。佐藤監督は「下を向いていても仕方ない。やれることをやるのが大事」と言う。決して震災を言い訳にしないひたむきさが全国初勝利をもぎ取った。

 応援席では約800人が熱い声援を送った。全国からの協賛金は目標額の3倍の約3000万円に達した。「感謝の気持ちを表すには勝ち続けること」と指揮官。仲間のためにも、支えてくれた人への恩返しのためにも、富岡の挑戦はまだまだ終わらない。

 ▼松山商・大竹監督 50年ぶりの出場だったが、前半の失点で周囲の期待を裏切ってしまった。1勝したかったけど、この経験を糧にしたい。

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