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後藤「勇気」の2発!尚志 福島初の国立キップを獲得

[ 2012年1月6日 06:00 ]

<尚志・桐生一>後半33分、尚志・後藤(中央)が左足でこの日2点目となるゴールを決める

全国高校サッカー選手権準々決勝 尚志3―1桐生一

(1月5日 埼玉)
 東日本大震災で被災した尚志(福島)が初出場の桐生一(群馬)を3―1で下し、福島県勢として初の4強入りを決めた。豊富な運動量で相手の強力攻撃陣を封じると、エースFW後藤拓也(3年)の2ゴールなどで追いすがる桐生一を振り切った。
【試合結果 トーナメント表】

 尚志が歴史に大きな足跡を残した。国立への扉をこじ開ける原動力となったのは、感謝の気持ちと使命感だった。今大会の合言葉は「福島のなでしこジャパンになろう!」。仲村浩二監督は「諦めない気持ちを前面に出してくれた。特別な年にここまでこられてうれしい」と目を潤ませた。

 のろしを上げたのがエースの後藤だ。前半17分、ペナルティーエリア外の混戦から中央に抜け出し、GKとの1対1で冷静に右足でゴール左隅に流し込み、2試合連続となる先制弾。同31分にMF金田の芸術的なボレーが決まってリードを広げた。後半は桐生一にボールを回される場面も増え、22分に1点差に詰め寄られた。その嫌な流れを断ち切ったのも後藤だった。33分に相手のパスをカットすると、トップスピードでゴール目がけてドリブル。相手DF2人を振り切り、左足で今大会3点目を奪って勝負を決めた。

 昨年3月11日、白河市の後藤の実家のすぐ近くで発生した土砂崩れで死傷者が出た。同15日から2週間は自宅待機となり「もうサッカーができなくなるかも」と不安に駆られる日々を送った。3月末から練習を再開したが、放射線量の関係で練習時間は2時間以内に制約され「街から外で遊ぶ子供の姿が消え、福島が背負ったものの大きさを感じた」と指揮官。そんな逆境の中で臨んだ昨夏のインターハイ。8強の好成績を残せたことでチームが結束した。

 警戒区域内にあって県大会決勝で戦った富岡には中学時代に県トレセンで一緒だった仲間も多い。3日夜に後藤の携帯電話が鳴った。「俺たちの分まで頑張ってくれ」。元チームメートの言葉に使命感がこみ上げてきた。これまで母・郁子さん(46)に「国立に行きたい」というメールを送っていたが、4日のメールは「国立に連れて行く」という内容に変えた。

 苦難を乗り越えてたどり着いた聖地・国立。「特別な場所でサッカーができるのは本当に幸せだし、もっと福島に元気や勇気を届けたい」と後藤。仲間から託された思いと夢舞台に立てる喜びをピッチ上で思い切り表現するだけだ。

 ◆後藤 拓也(ごとう・たくや)1993年(平5)12月8日、福島県生まれの18歳。小学1年から白河FCでサッカーを始める。家族は両親、兄、弟。岩手大に進学予定で、将来の夢は保健体育の教諭。憧れの選手はアーセナルの宮市亮。利き足は右。血液型O。1メートル71、61キロ。

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