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メダルどころか…シンクロ日本屈辱の5位

[ 2008年8月24日 06:00 ]

演技を終え過呼吸状態に陥った小林の体を支えながらプールサイドへ運ぶ日本シンクロチーム

 【北京五輪 シンクロ】日本のメダルが途絶えた。シンクロナイズドスイミングのフリールーティン(FR)が行われ、テクニカルルーティン(TR)4位の日本は合計95・334点で5位に沈んだ。シンクロが五輪で採用された84年ロサンゼルス大会から全種目で獲得してきたメダルを初めて逃した。元日本代表の井村雅代コーチ(58)が指導する中国が初の銅メダルを獲得し、シンクロの勢力図が大きく変わった。また、日本は大会16日目で初めてメダル獲得者がゼロだった。

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 演技を終え、拍手で包まれた会場が静まりかえった。プールの中央で、小林が極度の緊張から過呼吸を発症し、力が抜けたように水に沈んだ。サブの石黒が真っ先にプールに飛び込み、続いて男性スタッフ2人も上着を脱いで救助に向かった。小林はプールサイドまで他の選手に支えられて何とかたどり着いた。だが、意識がもうろうとし、水から上がれず、最後は担架で医務室に運ばれた。異様なムードのまま、シンクロ日本の北京は終わった。
 屈辱的な5位だった。TRでリードを許したライバル中国に完敗。当初は4位のはずが、試合後に冒頭のリフト技で土台となる選手の足が水底に触れたことが発覚して1点減点され、カナダに逆転を許し、TRの点数で順位こそ上回ったものの合計点数では米国にも並ばれた。デュエットでは銅メダルを死守したものの、84年ロサンゼルス五輪から続いた連続メダルは計13種目目でついに途切れてしまった。
 原田は「先輩たちが続けてきたメダルを止めてしまって申し訳ない」と頭を下げた。鈴木は「伝統ある日本を守っていかなければいけないと思ったけれど、難しかった。日本の恥」と声を絞り出した。FRのテーマである水の神「瀧神(りゅうじん)」を懸命に演じた選手たちに、水の神は味方してくれなかった。
 今回のチームはTRもFRも、日本の課題である芸術性を表現するために、あえて複雑な動きの多い演技を選択した。結果的に完遂度が下がり、、小川コーチは「足のキレや同調性に欠けた部分があった。日本の良さを出し切れなかった」と悔やんだ。作戦は裏目に出てしまった。
 ロンドン五輪へ向け、金子チームリーダーは「力が落ちないうちに切りかえて、巻き返さないといけない」と話した。だが、1度失った地位を再び取り戻すことの困難さは、かつての強国・米国やカナダが衰退後に浮上できていない事実が物語っている。メダル損失の代償は大きい。

 ≪原田&鈴木引退へ≫デュエットで銅メダルを獲得した原田と鈴木は今大会を最後に引退することが濃厚となった。試合後、2人はともに今後について「先のことは考えていない」と明言しなかった。だが、金子チームリーダーは「退くと思っている。鈴木は何度もやめたいと言ってきたが、よくここまで頑張ったと思う」と話した。
 ≪小林は回復≫過呼吸のため担架で医務室に運ばれた小林は約20分間ベッドで横になって、元気を取り戻した。帰り際に「大丈夫です」とだけ話して選手村に向かうバスに乗った。金子チームリーダーは「まじめで繊細で、緊張しやすい子。以前にもあった。問題ないです」と説明。原田は「泳ぎきってくれた。全力を出し切った」と限界までの頑張りを称えていた。ただ、日本の関係者からは「ジュニアの選手じゃあるまいし」と落胆の声が漏れていた。

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2008年8月24日のニュース