川崎名物・今川焼き、スタンドに響く変わった掛け声

[ 2014年1月3日 05:30 ]

川崎競馬ファンにはおなじみの「気多屋」

 【地方競馬です!!】川崎競馬場で胃が動くスポットがある。「おいしいとこどうぞ~」。鼻から抜けるような高い声が2号スタンド1階に響き渡る。ああ、きょうも元気にホカホカのあんこが呼んでいる。胃が甘みを欲してざわつき、正門からパドックへ向かって歩く速度が一瞬緩む。実際はあんこがしゃべるはずもなく、声の主は今川焼き「気多屋」の店員・堤ミヤさん(76)だ。

 一風変わった「おいしいとこ」の掛け声。どうしてこうなったのか、ずっと気になっていた。ミヤさんに訪ねると「皮もあんこもおいしいのよ。自分で食べておいしい物は人が食べてもおいしいはず。自信と誇りを持って売っている気持ちを込めたの」と答えが返ってきた。なるほど、今川焼きはおやつと思って侮っていた。気多屋で働いて7年のミヤさん。手のひらに収まる1個の今川焼きにとことん本気なのだ。

 川崎競馬場で店を構えて65年の気多屋。女将の疋田妙子さん(84)と息子の勝彦さん(58)、そしてミヤさんの3人で切り盛りする。季節によって微妙に塩加減を変えるなど、妙子さんこだわりの自家製あんこが自慢だ。熱々を一口ほおばると最初に塩気。少ししょっぱいくらいの感覚がその後に来る甘さをグンと引き立てている。

 きょうもきょうとて変わらず響く高い声。ああ、正月太りなんて忘れてまた足が止まりそうだ。(秋田 麻由子)

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2014年1月3日のニュース