不惑初の独演会、本寸法の「花見の仇討」「五貫裁き」を堪能!

[ 2024年3月25日 18:30 ]

桂三木助独演会のポスター
Photo By 提供写真

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】“推しの落語家”桂三木助が3月19日に不惑を迎えた。2日後の21日に東京都千代田区の内幸町ホールで独演会「五代目の挑戦vol.10」を開催。40歳となり、新たな1歩を踏み出した三木助をファンが温かく祝福した。

 開口一番を務めたのは、5月下席からの二つ目昇進が決まっている金原亭駒平(34)だ。2018年6月に金原亭世之介(66)に入門したのは落語家としては遅い部類の28歳の時。翌19年10月に前座となり、このたび晴れての二つ目だ。

 入門から6年近くが経っているが、コロナ禍の約3年間と重なってしまったのは気の毒で、長く前座を務める形となったのも仕方あるまい。もともとは劇団5454に在籍した小劇場の看板俳優。ルックスも良くて、何より声がよく通る。苦労話など前座を題材にした三木助とのにわかトークで沸かせた後、「金明竹」で、ご機嫌を伺った。「寿限無」と並ぶ代表的な前座噺とされるが、「わては、中橋の加賀屋佐吉方から使いに参じまして…」から始まる言い立てがチト難しく、大看板が高座にかけることもある演目。駒平の滑らかな口跡には感心した。伸びしろは無限大。

 続いて三木助の1席目。桜の開花を目前に控えたこの季節にぴったりの「花見の仇討」をかけた。6部(法華経を66部写経し、全国を旅して66の寺社に納経する修行者)の説明が必要な噺だが、花見の余興が目に浮かんでくるような描写と聞きやすい口跡。メリハリも聞かせてサゲまで持っていったのはさすがだ。

 仲入を挟んで、二つ目の金原亭杏寿(35)が登場。沖縄出身の花のある女性落語家で、「三木助独演会」には欠かせない存在。「権助魚」をかけたが、彼女も声がかわいらしい。

 同じ日、上野鈴本演芸場では林家つる子(36)と三遊亭わん丈(41)の真打昇進披露興行がスタート。抜てき昇進を果たしたつる子だけでなく、三木助と落語協会入門(03年)が同期の柳亭こみち(49)、そして蝶花楼桃花(42)ら女性の実力派が増えてきた。23年5月に「落語歌謡 品川心中」で歌手デビューも果たし“艶かわいい”と評判の杏寿のこれからが楽しみだ。

 再び高座に上がった三木助は2席目に「五貫裁き」を披露。名奉行と言われた大岡越前が重要な役どころで登場する、いわゆる「大岡政談」の1つだ。立川談志師の高座がCDで残っており、三遊亭圓生師は「一文惜しみ」の題で演じていた。

 八五郎と大家が、大岡越前の力を借りて、ケチで有名な質屋の徳力家万右衛門をやっつける痛快劇。自分の弟子にもめったに稽古をつけなかった談志師から直接教えてもらった財産のような1席で、愛おしむように演じているように見えたのは筆者だけではなかっただろう。

 独演会の始まりは落語の演目が散りばめられたユニークな映像で始まるが、次回7月11日の会では新バージョンを登場させると三木助は予告した。期待は膨らむばかりだ。

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