「ブギウギ」異例のフルコーラス歌唱 踊り出した草なぎ剛

[ 2023年11月10日 09:30 ]

連続テレビ小説「ブギウギ」の歌唱シーンで、指揮する羽鳥善一(草なぎ剛)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】11月10日放送のNHK「ブギウギ」第30回で、俳優の趣里(33)が演じる主人公・福来スズ子が楽曲「ラッパと娘」をフルコーラスで歌った。

 「ラッパと娘」の歌唱シーンは3分以上。15分ドラマの5分の1以上に及ぶ異例の展開だった。

 制作統括の福岡利武氏は「『ステージの人』であるスズ子の舞台をしっかり見せたいという思い、長い尺で視聴者のみなさんにも本当にお客さんになった気分で見てもらいたいという思い、舞台に没頭してもらいたいという思いがあった」と説明する。

 スズ子のモデルは終戦後間もない頃に「東京ブギウギ」をヒットさせた歌手の笠置シヅ子さん。「ラッパと娘」は、「東京ブギウギ」のほか「青い山脈」「別れのブルース」「銀座カンカン娘」などを手がけた作曲家の服部良一さんの作品(戦前の1939年)。この朝ドラでは服部さんをモデルにした作曲家の羽鳥善一(草なぎ剛)が作った形になっている。

 福岡氏は「『ラッパと娘』はとにかく面白い曲で、聞けば聞くほど奥深さを感じて楽しくなる。戦前にこんなにファンキーで格好いい曲があったのか!と思う」と楽曲の良さを強調する。

 原曲は笠置さんの力強く個性的な歌声が印象的。ドラマでカバーする趣里には相当な歌唱力が求められた。

 福岡氏は「あのシーンで、趣里さんには1回ではなく何回か歌ってもらっている。シーンが長ければ長いほど大変で、趣里さんにとって非常にハードな撮影だったと思う。歌い終わった場面では、やり切った思いが顔に表れている。本当に素晴らしい」と趣里の熱演をたたえる。

 歌唱シーンでは、スズ子の斜め後ろで羽鳥善一(草なぎ)が指揮。善一は「ラッパと娘」に関して事前に周囲に対して「歌は誰かが歌って、それを観客が聞いて初めて完成する」と持論を示していた。

 福岡氏は「本来はあのシーンで善一は指揮しているだけだった。ところが、草なぎさんは途中から指揮をしながら踊り出した。草なぎさんが『オレがステージの上で感じたまま演じたいんだけど、いいよね?』とおっしゃるので『もちろんです。やってください』という感じだった。あのステージで本当に曲が完成した喜びを草なぎさんが表現してくれた」と明かす。

 善一は練習の厳しさから「笑う鬼」と言われるが、純粋に音楽を愛し、ユニークさも際立つ人物。練習でスズ子の歌を促す際に「ワン、ツー、スリー、フォー」ではなく「スリー、ツー、ワン、ゼロ」と逆にカウントするところも、草なぎの独特な口ぶりによって味わい深くなっている。

 福岡氏は「逆カウントは脚本の足立紳さんが善一のキャラクターを考えた上で出した案だった。音楽担当の服部隆之さんに相談したら『それは面白い。新しいものを作り出そうとする気持ちが感じられる』と乗ってくれた。草なぎさんも脚本を読んで『分かるよ。スリー、ツー、ワン、ゼロはとても大事だね』と言ってくれた。草なぎさんは音楽好きの善一の気持ちを全身で表し、弾けてエネルギッシュな人物にしてくれている」と喜ぶ。

 趣里と草なぎが生み出すパワフルな音楽シーンは今後もドラマのみどころになるだろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局文化社会部専門委員。テレビやラジオ、音楽などを担当。

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