天狗様たちが集まって一席披露 桂歌助が始めた落語普及活動

[ 2023年10月26日 10:00 ]

講師陣と出演者が記念撮影(左端は桂歌若)                               
Photo By スポニチ

 【笠原然朗の舌先三寸】落語や講談、浪曲をやるシロウト衆を称して「天狗連」という。うまい下手はともかく、人前で演じて天狗になっている様子を揶揄した呼び方である。

 そんな天狗様たちが集まっての会、第19回渋谷かるち家寄席(10月22日、新宿区内で開催)をのぞいてみた。

 同会を主宰、指導するのは故・桂歌丸さんの二番弟子、桂歌助。三番弟子の桂歌若も“教官”として稽古に立ち会っている。稽古は月2回で1回30分。歌丸さんの遺伝子を引継ぐ本格派二人の直接指導は魅力的だ。

 この日は、お手本として歌助が「初天神」、歌若が「粗忽長屋」を披露したあと仲入りを挟んで5人が高座に上がった。

 持ち時間は一人15~20分ほど。代わる代わる演者が登場する寄席での一人あたりの尺(持ち時間)と同じぐらい。皆さん、働いている職場での出来事などをまくらに振って本題へ。

 75歳の夢見亭せい幸さんが演じたのはホラ吹き噺の「弥次郎」。会社を定年退職してから落語を習いはじめ、歌助の会のほか市民サークルにも所属している。「緊張しすぎて出来はいまひとつ」だと言うが、うまい下手を抜きにして味のある高座に仕上がった

 遊酔亭蔵馬さん(69)が掛けたのは「長命」。夫を次々と亡くす美人妻、そのわけをめぐっての八五郎とご隠居さんとのやりとりが聞かせどころ。

 普段の生活も着物で過ごしている歌助と和装好きが縁で出会い、落語を習い始めて10年。いまでは老人介護施設などへの慰問で落語を演じる腕前だ。

 「持ちネタは歌助師匠が得意な酒の噺、『試し酒』や『寄合酒』ですね」

 トリをとったのはこの日の演者で紅一点、お茶っ葉亭茶葉さん(31)。歌助が2018年に出版した「師匠 歌丸」(イーストプレス)の編集を担当したことから落語に興味をもち習い始めた。

 この日、演じたのは「ちりとてちん」。灘の生一本を飲んだり、鯛の刺し身やウナギ、そしてまずいまずい珍味「ちりとてちん」を食べる仕草での見せる噺を表情たっぷりに演じて笑いをとった。

 「師匠に言われた通り演じています。落語を始めてから人前で感情表現が自然とできるようになりました」

 話し方の勉強にもなり出版企画のプレゼンでも役だっています」と話した。

 歌助は10カ所以上でアマチュアに落語を教え、“弟子”は約80人。発表会は横浜市の岩間市民プラザで定期的に開催している「岩間寄席」などがある。

 「日本人なら落語の一席も話してもらいたい」という思いから始めた落語普及活動だが、一方で指導するにあたり「どこをどう教えたら伸びるということを意識しています。そのために自分の方もあやふやのまま噺を対していては駄目です」。 天狗連とのやりとりもまた芸のこやしとなっているようだ。

 これから超高齢化社会を迎える中、趣味や生きがい作りも大切だ。落語を覚えて人前で一席ご披露できるなんぞはオツなもの。脳の健康維持にも役立ちそう。そして何より、笑って笑わせる門には福来たるですな。

続きを表示

この記事のフォト

「美脚」特集記事

「STARTO ENTERTAINMENT」特集記事

2023年10月26日のニュース