無理は禁物 「みちのく潮風トレイル」歩きは年齢を考えショートカットルートで

[ 2023年7月23日 08:00 ]

「みちのくトレイル」の道標と「避難順路」の立て看板も
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 【笠原然朗の舌先三寸】60歳の定年を前に取得した長い夏休み。夏の東北地方を巡る。「みちのく潮風トレイル」歩きも目的の1つだ。

 旅2日目のスタートは青森県八戸市の種差海岸。早起きして太平洋上に昇る朝日を拝み、泊まった民宿石橋でたっぷりと朝食をいただいてから出発だ。行程は岩手県洋野町種市まで約20キロ。

 「みちのく潮風トレイル」は八戸と福島県相馬市を結ぶ約1000キロのウォーキングコース。変化に富んだルートで、種差海岸~種市の“種種”コースには途中、階上岳(739メートル)を登頂する約30キロの迂回路が設定されている。ただキャンプ泊は必定。59歳のロートルに無理は禁物だ。計画段階から踏破を諦めてショートカットルートを選んだ。

 種差海岸から道はいきなりの難路だった。両側から夏草が覆い被さる。民家も近くにあるので遭難の心配はないが、アップダウンもあり、ウォーキングというよりちょっとした山登りだ。

 特定営利法人みちのくトレイルクラブで入手した地図には「自然歩道・登山道等」の表記となっている。歩いてみなければわからない。
 道はやがて自動車道と合流。「みちのくトレイル」の道標を頼りに進む。「避難順路」の標識が並んで立っているのはこの地も東日本大震災の津波に洗われたことを物語る。

 道中には法師浜、大久喜、金浜、大蛇、追越など漁港が点在している。漁船数隻の小さな港もある。

 階上町追越港前で店を構える坂下釣具店を覗いたら店主の坂下利助さんがいた。73歳には見えない若々しさ。スポニチ主催の釣り大会などでお世話になった。コロナ前から約5年ぶりの再会となる。

 この時季の階上沖ではアイナメが釣れる。青森では「アブラメ」。その名前の通り、いまがよく脂が乗って旬。皮を残したまま炙る「焼きしも造り」がうまい。

 店頭で売られているホヤをむいてもらって食べた。別名「海のパイナップル」。鮮烈な磯の香りと甘みが口中に広がる。食べているのは目の前に広がる夏だ。

 「過疎化が止まらない」と坂下さんは嘆いた。東日本大震災の津波は小さな漁港を襲い、階上町内で漁港被害が最も甚大で、漁船は260隻のうち124隻が流出、沈没、損壊した。そしてコロナ。観光業へのダメージも大きく、旅行客相手の商店や民宿なども閉店に追い込まれたという。

 観光客誘致のカンフル剤はあるのか?コロナで止まっていた「いちご煮まつり」が23日、4年ぶりに開催されたのは朗報だが。

 「途中で食べて」と「南部せんべい」をお土産にいただき先へ急ごう。階上までが約10キロ。道半ばだ。

 涼風が渡る。この地は「やませ」と呼ばれる東寄りの風が吹く。天然クーラーの中を歩くのは気持ちいい。

 4時間40分で重い足を引きずりながら、この日の宿泊地「マリンサイドスパたねいち」に着いた。

 江戸時代の旅は徒歩が基本。東海道の旅では1日10里(約40キロ)を目安に歩いた。いかに昔の人が健脚だったかを物語る。
 文明は発達したが、人間としての能力は退化したとしか思えない。  

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