定年を前に三陸沿岸を“漂泊の旅”自在の境地で遊んでみよう

[ 2023年7月21日 08:00 ]

「みちのく潮風トレイル」マップと青春18きっぷで夏の三陸へ
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 【笠原 舌先三寸】松尾芭蕉が「奥の細道」への旅に出発したのは46歳のとき。「人生50年」といわれた時代である。「予もいづれの年よりか、片雲の風にさそはれて、漂泊の思ひやまず…」と門人の曽良を伴って約150日間、東北から北陸を巡った。人生も最晩年に選んだ“決死行”だった。

 私も60歳の還暦を約3週間後に控えて旅立とうと思う。定年を前に長い夏休みをもらった。そのうちの10日間を使って、東北地方三陸沿岸を“漂泊”してみたい。

 コースは青森県八戸市から岩手県大船渡市までの約200キロ。交通手段は徒歩と列車を使う。

 八戸市から福島県相馬市まで約1025キロを結ぶ「みちのく潮風トレイル」をご存じだろうか? 2011年3月11日の東日本大震災で甚大な被害を受けた東北沿岸部。道の整備はその復興プロジェクトとして計画され19年に全線開通した。

 私の旅ではこの「みちのくトレイル」の一部を歩き、青森県久慈市から大船渡市の盛駅を結ぶ三陸リアス線とつないで一本の線としたい。

 世界中には、歩く旅人に向けてのロングトレイルがいくつもある。有名なのは米国の「アパラチアントレイル」で全長約3500キロ。スペインの巡礼路「サンティアゴの道」は約900キロ。四国八十八カ所(約1400キロ)も古来から伝わる日本のロングトレイルなのかもしれない。

 「みちのく潮風トレイル」に話を戻す。東日本大震災に伴う津波被害を受けた場所をつなぐ。震災から12年が経ったが復興は道半ば。それもあってか、歩いて踏破する場合、1日の歩行距離を約20キロに想定して計画を立てると多くのコースでキャンプを余儀なくされることがわかった。学生時代、日本アルプスや北海道の大雪山系を歩き回っており、ソロキャンプの基礎知識はあるが、生活用品一式を背負って亀のように進む“幕営旅”は60歳を前にしたロートルには困難であると判断した。

 従って宿泊場所は民宿やホテルなどを使うことにした。

 「潮風トレイル」の情報は多いといえない。書店などでガイドブックが市販されているわけでもない。地図は特定非営利活動法人みちのくトレイルクラブから購入した。トレイルに関する情報は同クラブのホームページから得ることができる。

 「被災地のいま」を歩くことによって得られるものは何なのか?巡礼とあわせて、“乗り鉄”心をくすぐる三陸リアス線の列車旅。ことのついでに現地までの往復は「青春18きっぷ」を利用することにした。5回分で1万2050円。1回分は始発から終電まで利用可能なのでその日のうちなら2410円で遠距離を移動できるのがメリットだ。三陸沿岸まで東北新幹線などを利用すると片道で1万7000~8000円ぐらい。時間さえ気にせず急がない旅を選べば格段に安くつく。現在、JR各駅のみどりの窓口、特定の券売機などで8月31日まで発売中。9月10日まで使える。名前こそ「青春」だが年齢制限はない。

 わが「漂泊の旅」について整理するとこうなる。

 (1)現地までの往復の交通は「青春18きっぷ」を使う。三陸リアス線など第3セクター線は利用できないためその都度、きっぷを買う。

 (2)「みちのく潮風トレイル」の一部を歩く。

 (3)宿泊は民宿、ホテルなど既存の施設を利用する。

 (4)予算は往復交通費込みで15万円程度。少しは地元の酒肴にありつきたい。

 あとは風まかせお天気まかせ。10日間ほどの行程。帰りは決めていない。

 中国は荘子の言葉にある。「不測に立ちて無有に遊ぶ」。予測できないことに意を左右されることなく、起こったことに向き合いましょう…ぐらいの意味。旅では「自在の境地」で遊んでみよう。

 旅の様子は何回かにわけてリポートします。

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