すべてが“熱い”ドラマ「全裸監督」 送り手のテンションもギンギン!

[ 2019年8月19日 11:35 ]

「全裸監督」のワールドプレミアに出席した(前列左から)伊藤沙莉、森田望智、玉山鉄二、山田孝之、小雪、武正晴監督、(後列左から)後藤剛範、板尾創路、国村隼、石橋凌、リリー・フランキー、冨手麻妙
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 1980年、大阪環状線の京橋駅を降りてすぐの商店街には、いかがわしい空気が漂っていた。小学高学年には刺激が強すぎる店ばかり。不良に絶対絡まれるゲームセンターに、店内が暗いを通り越して“黒い”喫茶店。一番覚えているのはビニールで包まれた本を売っていた店だ。通称・ビニ本屋。店には中高年から若者まで人がわんさかいた。目をギラギラさせている大人たちをいつも友達と遠巻きに見つめていた。

 ネットフリックスのドラマ「全裸監督」にも、その湯気でも立ち上がりそうな“むき出しの欲望”が漂う。作品に出てくるのは、あの時の大人たちだ。必死になってエロにかぶりつく。ビニ本から裏本、アダルトビデオで世の中を動かした“AVの帝王”村西とおる監督を題材にした虚実取りまぜた自伝的作品。1980年代を熱くさせた「ナイスですね~!」の名フレーズもそうだが伝説のワキ毛女優の黒木香も登場。とにかくぶっ飛んでいる。

 なかでも村西役の山田孝之の演技はもう“本人”レベル。AV撮影時に丁寧な言葉でエキセントリックにまくし立てる様子や、エロに対する情熱がすさまじい。山田自身も人気映画「クローズZERO」でハマリ役だった芹沢多摩雄の名前を挙げ「海外でセリザワと呼ばれることが多いのですが、これからはムラニシと呼ばれたい」と思い入れも半端ではない。

 村西をベッドの上で組み伏せ、むさぼる黒木役の森田望智も強烈なインパクト。作中に登場する、ホラ貝を吹き倒す名作ビデオ「SMぽいの好き」も懐かしい。全8話をイッキ見したという視聴者も多く、爆笑問題の太田光、有吉弘行らも大絶賛する出来だ。

 「全裸監督」は地上波ではもちろんのこと、映画でも難しいギリギリのレベル。有料だからこそできる挑戦である。現在、世界190カ国で配信されており、2015年9月の日本でのサービス開始以来、最大の反響という。「具体的な数字は出せないですけど年間1000作品ほどある中でマックス。本当に評判がマックスです」。送り手のテンションもギンギンである。

 シーズン2の制作も決まった。これも作品のリリース発表に慎重を期すネットフリックスでは考えられない英断。シーズン1の配信からたった8日後の16日に発表したのだから、その期待値も計り知れない。日本の実写作品でシーズン2が作られるのも初めてだ。

 「全裸監督」はプロジェクト立ち上げから2年半かけて制作された。山田らが初期の段階から携わり、役作りだけでなく、セットも極限まで作り込んでいる。「コンクリートの上のアスファルトまでこだわって作ってます。現実とは違うところはあるのですが、当時の歌舞伎町の空気感を再現。アイデアをもらって、それに合わせて現場で作っていく。武正晴監督も“今までの経験が恥ずかしいくらい役に立っている”と話してます」(関係者)。

 出演者のコンビネーションも抜群でチーム村西として動くため、途中からは演出も要らなくなったという。その仲の良さは画面からも伝わる。アダルトビデオ創世期の物語。「全裸監督」には、人間のたくましさや哀しさ、生々しい営みから笑いまでが網羅されており、すべてが熱い。

 村西のセリフ「ありのままの人間を撮って何が猥雑だ!」。その熱量こそが世界を動かす。エロでセリザワを抜けるか抜けないか。山田が「世界のムラニシ」と呼ばれる日。日本の“放送禁止”エンターテインメントが世界に認められたことになる。(記者コラム)

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2019年8月19日のニュース